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 「伯父様、あとナル兄ちゃんの事なのですが…」

 勝手な事だと分かっていても、やっぱり伯父に相談しておきたい。兄ちゃんの事、心配だもん。


 「何かあったのか?」

 「恐らく…ザック殿下やミカエル様に神殿でお会いした時に、兄ちゃん、ちょっと態度がお二人に無礼だったんです。殿下に怒られた訳でもないんですけど…でも、ただ「3人の中で一番身分も身長も低いのはお前だ」みたいな事を言われたらしくて、それから様子がおかしいの」


 「そうか」

 伯父はしばらく考えて「あの子の子供の時間を少し奪い過ぎたようだな」と言って応接室を出て行った。



 「伯父上、お呼びでしょうか?」

 「ああベルナルド。そこに座りなさい。大した話じゃないのだが、お前に休暇をやろうと思ってね」

 「えっいきなりですか?」

 「そうだ。お前は12の頃からずっと侯爵家で頑張って勉強して、働いてくれてただろう?だが、それから一度も子爵家に帰っていない。だから一度、子爵家に戻りなさい」

 

 「伯父上!それはっいつまでですか?俺は…いつ侯爵家に戻れますか?」

 「ベルナルドは侯爵家に居たいのか?」

 ベルナルドの焦りと必死さが伝わってくる。確かにこの子は子爵家で埋もれさせるのは惜しい子だ。自ら望んだベルと違って。


 「侯爵家に居たいです!俺は侯爵家の仕事が好きです!」

 「子爵家を継ぐのにか?」「それは…」

 「まあいい。でも無条件に子爵家に戻すわけではない。条件があるぞ、ベルナルド」

 「条件?」「そうだ。ベルナルド、お前、子爵領の野生馬に乗れるようになってこい」

 「野生馬にですか?」

 「お前は挑む前にこっちに来てしまったんだろう?だから乗れるようになってから戻って来い。お前は“水色”だからマリィのように苦労せずに早いかもしれんし、リリのように1年近くかかるかもしれないなぁ」

 「1年も!?」


 「そうだ。頑張って来い。あと時々、湖の側に建築中の別荘の進捗状況も確認してくれ。それと別荘で雇う予定の北の貴族達の様子も見てくれ。頼んだぞベルナルド」

 「伯父上、それって俺が野生馬に乗るのに時間がかかる想定じゃないか?」

 「ハハハッ。好きなだけ時間をかけてくるといいい。朗報を待っているよ」


 リリベルが書いた手紙と、絵本、オルゴールやお土産は急遽、子爵領に帰る事になった兄に託された。

 「兄ちゃん、皆に宜しくね」「ああ」

 「時々、爺様の畑も手伝ってあげてくれない?」「ああ」

 「婆様の礼拝も付き添ってあげて」「ああ」

 ナル兄ちゃんは、どこか元気がなさそうに子爵領に帰って行った。


 「リリ、ナルはどれぐらいで野生馬に乗れるようになると思うか?」と伯父に聞かれ、リリベルは考える。

 もし本当に馬が外見も見ているなら、容姿的には有利だろう。でも容姿プラス何かが必要なら?

 多分、そのプラスを習得せねばならないだろう。


 すでに持っているなら何頭か顔見知りになって、気の合う馬がいれば直ぐだ。その場合は1ヶ月以内だろう。

 だが、これから何か必要で習得するなら、その期間も必要になる。その事を兄ちゃんが早く気付けるといいけど。


 リリベルは伯父に「半年かな」と長くなりそうな方を伝えてみる。

 「そんなにかかるか?」と伯父は意外そうに言う。

 「伯父様はもっと早いと思うの?」と聞くと

 「全く想像できないな。だが私の手から野菜を食べてくれただろう?だから、もう少し早いかと思ってな」と言った。

 

 ああそうか。でもあの時はリリベルの友達になった馬だった。それに爺様の野菜は彼らの大好物だ。

 そして伯父の偉そうな雰囲気は彼らにも伝わるし、そういう力のありそうな人も見抜く。だから伯父の手からも野菜を食べたのだ。


 伯父にそれを伝えると「そうなのか〜」と少し驚き、

 「でも私にはきっと乗れないな。私は腹黒いしな」と言って笑ったが

 「多分、腹黒だから乗せるんじゃない?」と思った事は黙っておいた。

 

 さて兄はどれぐらいで侯爵家に戻って来れるのか!?

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