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 「なあ。リリベル嬢、まだ隠している事があるだろう?全部話してくれないかな」

 「アイザックでもいいし、前侯爵が話してくれてもいいよ?」

 王太子殿下はリリベル達を見回してザック殿下に標的を定める。

 「アイザック?兄さんに秘密は良くないだろ?」

 「兄上!」「マレシアナにも失望されたくないだろう?」

 

 伯父が王太子殿下の言葉を遮るように

 「私は話さないよ王太子殿下。悪いが君に話す義理はない。通行証は国益だろ?切り離して考えてもらおう。そしてリリベルも話す義理はない」

 鋭く睨みを効かせて言う。


 「怖いなぁ。前侯爵は。だがザックは違うよな?」

 王太子、やはり見逃してくれないのか。でも彼は何が引っ掛かっているんだろう?


 「私は話せない。でもリリベル嬢が許可してくれるなら…話す」

 ザック殿下…私に権利をなすり付けたな!

 でもザック殿下の表情を見れば苦しんでいるのが分かる。王太子の事も王太子妃の事も裏切りたくないんだろう。


 「ザック殿下が私との板挟みで苦しんでいるので話します。でもこれは私の私情です。だから殿下も私の許可を得ようとして下さっている。ザック殿下の為に話しますけど、でも私には得はない。王太子殿下は私に何の見返りを下さいますか?ザック殿下を助ける見返りを下さい!」


 「わっ、見返りが無ければザックは見殺しか?助けると言いつつ、ちゃっかりしているね」

 何とでも言え!「う〜ん。じゃあ一個だけ、一個だけ教えて?」

 「元々一個しか無いですけど!」

 「手強いな。仕方ない。こっちはこれを出すよ。実はカテリーナ様のお母上の日記がある。その内容でどう?日記自体は王家の宝物庫の中だ。だから現物を見せる事はできない。でも私は全部読んで内容を覚えている」

 伯父も驚いて顔を上げる。


 「前侯爵も興味がありそうだ。侯爵にも一つ聞きたい事があるから、それで手を打とう。二人ともいいかい?」

 リリベルは伯父と顔を見合わせて頷き合うが、その前に確認だ。


 「王太子殿下、カテリーナ様のお母上の日記の内容は、どこまで伺えるのですか?」

 「ああ。それは大事な事だよな。でもそんなに凄い事は書いてないんだ。でもこれは知りたいだろう?彼女が国王と北の王子どちらに気持ちがあったのか?もちろん最後は北の王子の子を身籠って、亡くなった訳だけど」


 王妃様は国王陛下にも未練があったという事なのだろうか?

 「分かりました。では私からです。私の秘密は…東の第一王子殿下に求婚されました。それは国王陛下、王妃殿下もザック殿下もいらした前でです。ですから嘘でも冗談でもありません」

 「えっ、それは私情じゃなくない?国が絡むでしょ?」

 「ですが第一王子殿下はまだ10歳です。国王陛下から5年の猶予を与えられました。私が5年以内に別の人と結婚すれば無効です。それに王子殿下の気が、その間に変わる恐れもありますから」


 「確かに10歳だものな。しかし、その姿だったのだろう?それでも彼は君に求婚してきたのか?」

 「信じられなければ、それでもいいです。でも秘密はそれだけです」

 「分かった。では前侯爵、君への質問は以前、カテリーナ様の墓参りの時、カテリーナ様のお母上の墓標に置いた“水色の石の指輪”あれにはどんな意味がある?」

 そんなにあれが気になっていたのか王太子は!


 「あれは北の王子の遺品だ。彼がもしかしたら望んだかもしれないと思って置いただけだ。彼の晩年は王妃の冥福を祈っていたそうだからな」

 「成程、やはりそうか」

 水色は北の王子の瞳の色だ。だから彼の形見を王妃の元へって想像がつくだろうけど、なぜ、わざわざ確認したかったのだろう?


 王太子は語り出した。

 「王妃の浮気は国王への当て付けだった。美しい北の王子を見れば国王は焦って自分の元に戻るのではないかと。別に妊娠もどうでも良かった。すでに後継の王子も二人いたから。だけど国王は王妃を切り捨てようとした。結局それは前王によって阻まれたが国王は戻って来なかった。逆に北の王子は自分に助けて欲しいと縋った」


 「彼は国に帰れば望まない結婚が控えていると訴えた。寂しかった王妃は北の王子を匿った。かなり長い間匿ったみたいだよ。それはカテリーナ様と君の祖父との年齢差を考えると分かるだろう?その間、国王は自分の女性関係を一切絶ったんだ。王妃はだから期待したんだ国王からの歩み寄りを。だが彼は戻って来なかった」


 「北の王子は王妃の気持ちを知っていたから、ある日、別れを告げたんだが王妃がそれを拒んだ。そしてまた二人は男女の仲になったんだ。王妃は妊娠したが年齢のせいで出産は無理だと医師に告げられたそうだが、オリベル王女もカテリーナ王女も自分の我儘で可愛がってあげる事ができなかったから、また自分勝手に子供を殺す事はできないと堕胎を拒否したそうだ」


 「だが母体が出産に耐えられなかった。彼女は恐らく死を覚悟していたんだ。知っているかい?王族は死んだ時は自身の宝石などは国の財産とみなされるから、たとえ大事にしていた物でも墓に入れる事はできない。だが身に付けている物だけは剥がされる事なく身に付けたまま葬られる。彼女は出産に国王から貰った指輪とイヤリング、ブレスレット、ネックレス、ありったけの思い出の品を身に付けて臨んだんだよ」


 「そしてそのまま亡くなったから、国王から貰った宝石を身につけたまま葬られた。国王がその後、精神を病んだのは王妃の亡骸を見たからだ。王妃は最後はこの国の王妃として、いや国王の妻として亡くなったんだよ。王妃の心はずっと国王にあった。それを知った国王は壊れてしまったんだ。だから前侯爵がした事は、もしかしたら余計なことだったかもしれないなぁ。だが北の王子の気持ちを考えれば良かった事かもしれないがね」


 その場の空気がすごく重くなった。

 「この話を聞いて次のカテリーナ様の墓参りの時に、王妃の墓標から指輪を回収するかは任せるよ。北の王子は死後も王妃の側にいたかったかな?」

 それで王太子殿下への報告は終わった。

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