132
このレストランの食後のデザートに頼んだミルクレープにも小さな国旗が刺さっていた。
ザック殿下の言うところの“お子様ランチ”というヤツだ。しかしこの国では祝い事があると食後のデザートに国旗を刺すのだそうだ。小さな事でも文化を誤ると要らぬ誤解を招きそうだな。
南の人なら、これを子供扱いされたと思うのかもしれないな。そして大トカゲを食べる事実はどうなんだろう?その辺は南との交流に影響は無いのか?
ガブリエラ様に聞いてみると
「大丈夫ですよ。例え大人のご飯に旗が刺さっていても、デザートに刺さっていても南の人は気にしません。旗は子供が喜ぶかな?くらいの飾りなんですよ」
「では大トカゲを食べる事は?」
「それも大丈夫です。南ではワニも食べますから」
「では学院時代、ガブリエラ様とフィリップ様との間にあったことは?」
「それは「リリベル嬢ドサクサに紛れて聞かないで下さい!」
チッ、フィリップ様の邪魔が入った。
「でも、一昨日は夕日をバックにこの川沿いを手を繋いで歩いたんですよねぇ?」
「ヤダ!リリベル嬢、見てたんですか!?」
「え?マジでやったんだ…」「ガブリエラ、修行が足りんな」
「わーリリベル嬢の誘導尋問ぱねぇ」
防御に遅れを取ったフィリップ様が目を無にして俯いている。
ゴメンナサイ、つい。
食後は散歩がてら川沿いを歩いて街中に入る。5分も歩けば繁華街だ。街の様子も西とそう変わらない。
お土産、何がいいだろうか?
「ガブリエラ様、何かお土産になりそうな物はないでしょうか?」
「そうですねえ。東の国は知恵と技術の国なので細かい作業の物が多いのです。雑貨屋に行ってみましょう」
雑貨屋には細かい刺繍の小物や、綺麗な細工のオルゴール、美しい絵付けの食器などもあって、見ているだけでも、とても楽しい。
何を買おうかすごく悩む。細かい細工のアクセサリーもある。石は大きな宝石を削った時とか採掘時に崩れたクズ石を使っているみたいだが、石よりも台座や金具が凝っていて可愛い。値段も手頃だ。
ああ、そうだ我が家系は音痴なんだった。だったら美しい音のオルゴールでも買おうかな。自分も家族も歌えないしな。箱も綺麗だけど曲も悩む。
「ガブリエラ、東の鉱山でも宝石は出たかな?」
「北ほどの質の良い物は少ないので、こうやって庶民向けのアクセサリーにしているのだと思います。宝石はやはり北の品質が一番です。伯父様」
「そうか。石よりもこのデザインと加工技術が東は良いな」伯父は仕事スイッチが入ったのだろうか?
ザック殿下は?フィリップ様と何か見てる。良かった目の肥えた王族でも楽しめているようだと、リリベルは再びオルゴール選びをする。
「ザック様、さっきからペリドットが気になっておいでですか?」
「リリベル嬢の瞳はエメラルドグリーンだろ?エメラルドの中でも選ぶのが難しいな。それにあいつ髪が短いからヘアアクセサリーも付けれないだろ」
「‥‥‥」まさか殿下はリリベル嬢へのプレゼントをお探しなのだろうか?
恋人や婚約者同士なら普通は自分の色をあげるものだが、友達としてなら相手の色を贈るのは普通の事だ。
だが、しかし…。
「そうですねぇ」とフィリップは答えておいた。
ザック様は後で「何でこんな物を買ったんだ?」って思わないといいですけど。




