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ザック殿下を始め東の国に同行したメンバーに、ガブリエラ様が加わり街まで移動している。
街の中心部へは伯爵邸からは馬車で30分程の距離らしい。
ザック殿下は茶髪のカツラを被っているが、赤毛じゃないだけマシというレベルで、まだ街中では目立ちそうだ。だから馬車から降りる時は帽子を被るらしい。
リリベルの髪も目立つから帽子を被るようにと、馬車に乗った時にツバが大きめのキャスケットをフィリップ様から渡された。
移動中にリリベルは宰相補佐官のガブリエラ様に色々、質問をする。
「補佐官様は東と南の外交を取り持つ為に、東に派遣されたのですか?」
「そうです。王女殿下が南に輿入れされた際に、私も宰相閣下に付いて南に赴きました。その時はまだ私は補佐官ではありませんでしたが、そのまま南に残り、補佐官の任命を受けて今度は南と東との国交をお手伝いする事になりました。リリベル嬢、私の事は従姉妹ですし、ぜひ名前で呼んで下さい」
「はい。ガブリエラ様。でも、どうして国交の手伝いは外交官がしなかったのでしょうか?そうだ!姉、私の姉の子爵夫人にはお会いになりましたか?」
「ええ、もちろん。王女殿下のご結婚は子爵夫妻が健闘されたから叶ったと聞いておりますし。あと子爵夫妻の代わりに私が外交を取り持つ事になったのは、あちらの王女殿下が子爵夫人を、いたく気に入られて離さないからなのです」
「姉は戻って来ても、いつもトンボ返りなのは、そのせいだったのですか?!」
「そうですね。でも、そろそろ王女殿下もご結婚が整うはずなので、子爵夫人も自由に動けるようになるのではないでしょうか」
そう言えばララ姉の年齢は今20歳だ。
学院中退後の遍歴が、かなり激動過ぎないか?
リリベルもそれに匹敵する一年を既に送っているけど、20歳までこのペースは結構キツイな。
姉と違って残りの4年は穏やかに過ごしたいものだな〜。
決して第一王子殿下とは結婚しないぞと心に誓う。
「ガブリエラ様も長いこと自国には帰国されていないのですか?」
「弟のラファエルが昨年、結婚しましたので、1ヶ月程だけ帰国しました」
「ミカエル様、聖騎士ミカエル様もガブリエラ様の弟君ですよね?」
「はい。ミカエルには会いましたか?」
「姉のいる大神殿で何度も。それに学院にも講演で来て下さいましたし、野生馬の件では子爵領もお世話になっています」
「あの子が役に立っているなら良かったです」
「ザック殿下、リリベル嬢、間もなく大きな建物が見えてきますが、あれがこの国で一番大きな図書館です」フィリップ様が声を掛けて下さった。
東の王都の図書館は自国で言うところの大神殿と同じくらい規模の大きな建物だった。歴史を感じる荘厳な建物で大勢の人が出入りするのが見える。
「あまり時間はありませんが、少し見学されてみますか?」と御者の方に言われて馬車を止めてもらう。
この後は昼食のレストランを予約してあったので、ほんの10分くらいしか見れなかったが、中も絵画や彫刻などが展示されており、本だけじゃなく芸術作品も見応えのある建物なんだなと時間一杯見学した。
お昼のレストランは王都を流れる川の河川敷にある煉瓦造りの素敵な雰囲気のお店だった。奥の個室に通されたが、個室の窓からも木々の間から川の流れや、川沿いを親子やカップルが仲良く歩いているのが見える。
成程、この一帯はデートスポットなのね。
きっと二人で手を繋ぎ、夕暮れの河川敷なんかを歩いちゃったに違いない。
リア充リサーチ乙です!