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 昨晩のうちに王城を出る荷造りを済ませ、朝食後、陛下の侍従さんのお迎えで書庫に向かう。

 あまり人が多くてもシャイな神様が困るだろうと、国王陛下、文部大臣と第一王子殿下、伯父の伯爵様だけが一緒に書庫に行く事になった。あとの皆は謁見室よりも大きい謁見の間で知らせを待つそうだ。


 リリベルが書庫の扉をノックする。

 「神様、リリベルです。今日、王城を発ちます。お別れに伺いました」と言うと中からバタバタバタと扉に走って来る音がして、ちょこっと扉が開いた。

 そして陛下が「私とリリベル嬢と、そこの伯爵だけが書庫に入る」と仰って三人で中に入ると、リリベルは、またムギュゥッと神様に抱き締められる。

 でも今回はちゃんと呼吸ができる締め付けで安心した。


 「神様、お別れに来ました」と言うと「お兄様」と一言。

 どこかの従兄弟に似てないか?と思いつつ「お兄様、お別れです」と再度言うと「気が変わらないかい?」と聞かれる。

 何度、聞かれてもリリベルの答えは決まっている「はい」だ。

 「そうか仕方ないね。そして約束の司書だよね。司書は…君の伯父の伯爵に決めたよ」と仰った。


 伯父は目が飛び出そうなほど驚いて

 「わっ私は確かに本好きだが、西の国の出身だ」と動揺している。

 「出身はどうでもいい。本好きならいいんだ。それに多分10年くらいで代替わりだ。それまでの繋ぎだ」と仰った。

 伯父は「繋ぎとしてなら」と納得していたが、それでも300年振りだぞ?とリリベルは思う。


 「時々、こっちにも遊びに来てくれないか?」神様はリリベルに仰る。

 「はいお兄様、まずは帰国したら女神様にお兄様の事を報告しますね」と言うと、またムギュッとされた。


 そうだ、これを聞いておかないと!とリリベルは

 「お兄様、子爵家は北の女神様から何か呪いを受けているようなのですが、それが何か分かりますか?」と聞いてみた。

 神様は「えっ!?」と驚いてリリベルを見る。


 そして「ああ。随分、昔にかかった呪いだな。君が子爵家を出たらもう関係ないよ」と仰った。でも気になる。

 「一体、何の呪いなんでしょうか?」

 「困った事はないんでしょう?」「はい。多分」

 「なら問題ないよ。でも気になるよね。教えてあげる。でも私は解く事はできないよ」「構いません」


 「ふむ。子爵家にかかっている呪いは“音痴の呪い”だよ。あと楽器演奏は多分諦めた方がいい。でも打楽器は大丈夫だ。何でかな?中途半端だね」と仰って笑った。わー納得!

 「お兄様、お伺いできてスッキリしました。ありがとうございました」と言って、リリベルと伯父は書庫を出て来た。

 少し遅れて陛下も出て来て、また皆で謁見の間に向かう。


 「陛下、出る前に神様に何か言われてましたが、何と?」と伯爵が陛下にコッソリ尋ねると、陛下が

 「リリベル嬢に似た令嬢を身代わりにしても無駄だぞと仰られた」

 「なんと!そこまで姪に執着を?」

 「彼女から北の姉君の気配がするんだそうだ。君もだ」「それで…」

 「恐らくな。神は寂しかったんだろうな。妹の姿に似ていて姉の気配がしていた令嬢なら神が心を許すのは当然だ。君が選ばれた理由もだ」と仰った。


 北の国の王だけは女神の子供が王になるサイクルがある。つまり王族は女神の血筋だ。先祖に北の王族がいれば、僅かでも姉の気配が残るという事か。


 謁見の間には大勢の人が集まっていて国王陛下からの報告を待っていた。

 国王陛下が玉座に立ち「伯爵が“神の司書”に選ばれた」と報告すると、皆、伯爵が選ばれた事には驚いていたが300年振りの司書に喜びの方が大きいようで大歓声が上がった。


 国王陛下はリリベルの事は、王族と一部の人だけの秘密として伏せて下さった。

 ペガサスは死んではおらず生き延びて、西の山脈で子孫を残していた。その事を知って神が元気になられ、再び司書が選ばれたと公表して下さったのだ。


 西の国の出身の伯父が選ばれた事も、怪我を負ったペガサスを助けてくれたのは西の国民だ。

 だから神は西の国の者に感謝しているとされ、伯父が誹謗中傷されないように説明して下さった。

 リリベルはその様子を西の皆と端の方で見守っていた。本当に良かったと。


 お昼を前に伯父とザック殿下と、そろそろ王城をお暇すると侍従さんを通して陛下に伝えてもらう。

 陛下と王妃様、第一王子殿下がそっと広間を出て見送りに来て下さった。

 伯爵は司書に選ばれたので直ぐには戻れないだろう。だから彼を置いて先に伯爵邸に向かう事になっていた。

 王都の街は補佐官のガブリエラ様が案内して下さるそうだ。


 馬車に乗る前に国王ご家族に、まずは補佐官様が帰国の挨拶をされ、次にリリベルが挨拶をする。

 その時、第一王子殿下がリリベルの手を握って

 「私はリリベル嬢を妃に迎えたいです。私と結婚して下さい」と仰った。


 先に馬車に乗ろうと足を掛けていた伯父は滑り落ちそうになっていた。

 危ないぞ!


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