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「ちょっとぉ!何するんですか!ビックリしたぁ」とリリベルが、引きずり込んだ相手に抗議すると
「ああっ髪が短くなって!お前にも何があったんだ?」と聞いてくる。
この神様、さっき私の事「妹」って言っていたから、きっと勘違いしているよね?確かにリリベルも一瞬、見間違えて「お兄様?」って言ってしまったが、よく見ると違う。
金髪に水色の瞳はナル兄に似ているが、顔が違う。
顔はルト兄?いやマリィ姉だ…という事は、恐らく若い頃の父に一番似ているんだ。だから一瞬、どの顔か分からなくて…いやどの顔も神様に似ているようで分からなかったのだ。
だから正確には兄でもない!
「私はあなたの妹ではありません。西の隣国から来ました、リリベルと申します」と伝える。
神様は驚いて「ええっ妹じゃないのか?こんなに似てるのに」と顔をマジマジと見てくる。
でも納得したのか「そうだよね。妹はこの国には入れないものね」とションボリしかけたが、再び気を取り直し
「でも西の国から来たんだろう?妹は元気かな?知ってる?」とお尋ねになった。
「さあ分かりません。私はお会いした事がありませんので。聖女の姉なら知っているかもしれませんが」とお答えすると
「お姉さんは聖女なの?そうか〜納得。君に似ているの?」とまたお尋ねになったので
「あなたにソックリですよ」とお伝えすると
「そうなのか!私に似てるんだ〜」と言って、とても嬉しそうになさった。
何だか神様の目が潤んでいる。
国が三つに別れてから会えてないんだものね。気持ち分かる。
それからリリベルはこの国に来た経緯について神様に話した。野生馬の事も。
すると神様は「そうかペガサスも生きてたんだ。良かったよ。でも何で私の元に戻って来てくれなかったんだろう?」ってガッカリしてらっしゃったので
「ペガサスは怪我して飛べなくなっていたんですよ。きっと」と言うと
「でも陸路で…」とまだ諦めの悪い事を仰るから
「ペガサスはスネイプニルと番になったから帰らなかったんです。スネイプニルも北に帰らなかったんですから」とトドメを刺すと
「そうか。なら逆に祝福しないといけないか」と仰った。
あと「新しい司書は決めましたか?」とも聞いてみた。
これは東の人々が聞きたい事だろうと思って。
だけど「うーん。まだ」と歯切れ悪く仰るので
「また司書を選んで欲しいと皆様、願っていますよ」とお伝えしてみると
「君がいいな!ねえ君、東に残ってくれない?」って、とんでもない事を言い出した。
「私は読書を嗜みません!」って言ったら「え〜嘘吐き」って言われた。
わ〜やっぱり神様は見て判るんだ?
「でも確かに最近は邪な本が多いよね。また冒険記とか読みなよ」と図星を言われた。
怖い!
「明日には王城を出て、明後日には国に帰ります」と伝えたら
「明日、城を出る前にまた会いに来て」とお願いされた。
神様が寂しそうだったから「いいですよ」って言うと、神様はニッコリ笑って「明日までに司書を決めとくよ」って仰って下さった。
それ絶対、皆、喜ぶ報告じゃん!
リリベルは「ありがとうございます!」って神様を抱き締めといた。
ちょっと無礼だったか?と思ったが
「できればお兄様って呼んでくれるともっとイイ」と図々しい事を仰っていたから、きっと大丈夫だろう。
皆が心配するから一旦、神様にお別れを言って書庫から出たら2時間も経っていたと聞いてびっくりした。
体感30分くらいのつもりだったのにな。
それから皆で、そのまま謁見室に連行された。