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「ザック殿下、おはようございます」
「フィリップ、何かお前、ご機嫌だね?」
「こちらに来てから、たくさんお休みを頂いておりますから」
「それだけじゃないよな。あ、もう恋人紹介はしなくてもいいから」
「左様でございますか」
「あ、ザック殿下おはようございます。フィリップ様も」
ザック殿下は朝食のオムレツを口に入れたばかりで軽く手を上げる。
「リリベル嬢、良い朝ですね。お茶はいかがですか?」
「ありがとうございます。フィリップ様」
「フィリップ君、私もお茶をいただけるか?」
「はい、前侯爵、伯爵様もどうぞ」
客室がある王城の一角の食堂で皆で朝食をいただいている。
「ザック殿下、今日はこの後、朝食後直ぐなんですけど、第一王子殿下達が王家の書庫をご案内下さるそうなんです。一緒に行きませんか?」
「そうだな今日は予定は無いからいいぞ」
「兄上、リリベル嬢、帰国は明後日でしたよね?明日は伯爵家に来ませんか?初孫ができたばかりなんです。ぜひ私の家族にも会って帰って下さい」
「わぁ、ぜひ!大丈夫だよね?伯父様」
「ああ、そうだな。そうしよう」
すごく楽しみだ。父にも報告したら喜ぶだろう。
「フィリップ様は昨日は何をされてお過ごしだったのですか?」
「昨日は王都の街を散策致しました」
そうか、ちゃっかり街デートを楽しまれた訳ですね。
「そうなんですか!いいなぁ。せっかく隣国に来たのに何も見れてないなぁ」
「ではリリベル嬢、明日、我が家に来る前に少し王都の街を案内しましょう」
「ええっ良いんですか!?嬉しいです」
「それはいいな。私も行きたい」
「ザック殿下が行かれるなら警護が大変じゃないですか!」
「お忍びに決まってるだろ」「真っ赤な髪でお忍びですか?」
「確かにこの国にも、あまり見ない鮮やかな赤い髪ですねぇ」
「ちゃんと茶髪のカツラがあるぞ」用意のいい事で。
「それよりも姪っ子の補佐官殿はどうされたかな?姿が見えないようだが?彼女も一緒に帰国するのだろう?もっと話をしておきたかったのだがな〜」
「伯父様、明日はきっと伯父様の屋敷にご一緒されますよ。ねっ、フィリップ様?」
「はい。きっと」フィリップ様がにこやかに仰る。
「そうか。なら良かった」伯父は何でお前が答える?みたいな顔を一瞬されたが、さすが元侯爵家の一員だ。
直ぐに空気を読んで納得され、何やらニマニマしている。うん。そういうところも一族だなと思える一端だ。
今回の旅の目的は神々の真相や関係を知りたいというものだったから、東の殿下方の語りだけで、ほとんど解明したようなものだ。
子爵家の呪いの件はこの国では判らないだろう。
西の国は聖女に守られ過ぎて、ほとんど情報が鎖国状態だったんだ。
東の国は確かに知恵の国で図書館は多いけど、特段、国民性に違いがあるようには見えない。でも東の神様がお隠れになってしまったから、神様に頼らずやって来たんだろうなと分かる。
我が国もそこは少し見習う点だろう。
「伯父様、こちらではどんな書物が今は流行っているのですか?」リリベルが持って来た恋愛小説はニーズがあるだろうか?
こっちで販路を得てもニーズがあるのかリサーチが必要だなとリリベルは思った。