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 晩餐のメニューも我が国とほとんど同じ内容で、特に珍しい物はなかったが、伯父が献上した南の米酒を大変気に入られ

 「宰相補佐官殿、南との国交をもっと本格化したら、まずは米酒を入れたいな」と仰られた。


 それから4番目の伯父である伯爵から、先程のペガサスの話の前に、東の神について説明を受ける。

 東の神様は知恵と技術の神であると言われている通り、人の生活を知恵と技術で豊かにする神様だった。

 西の妹神が聖女を選ぶように、東の兄神は、かつて王家の書庫の司書を国民の中から選んで、司書を通して新しい技術などを教えていたそうだ。

 

 しかし彼の愛馬のペガサスがある日、散歩から帰らなかった。

 目撃者の話では南のドラゴンに追われていたそうだ。

 遥か上空の出来事で誰もペガサスを助ける事ができなかったという。兄神はショックを受け、それ以来、王家の書庫に閉じ籠って出て来なくなってしまわれたそうだ。

 だから長い事、神の司書が選ばれる事もなく、王家の書庫に誰も入る事ができなくなってしまったのだという事だ。


 しかし神を心配した当時の王族が、代わる代わる書庫の扉の前で神を慰め続けたそうだ。それから王族のみが書庫に入れるようになったそうだ。


 そこまで説明を受けてリリベルは思った。

 「王族とはどこまでなのですか?伯父である伯爵様も王女殿下の血をお引きですが」と尋ねると、陛下は

 「直系の王族である事が大事だ」と仰った。


 なるほど。そこは子爵領の野生馬とは違うらしい。

「?」ちょっと待てよ、あいつらはどうやって血筋を確かめているの?まさか外見で判断してる!?リリベルは唐突に思い付いて驚愕する。

 だったらミカエル様はずっと背には乗れないだろう。伯父は白髪混じりだが金髪で水色の瞳だ。だとしたらザック殿下も駄目だな。


 リリベルは今、気付いた事実に料理の肉を噛み締めながら一人納得する。

 しかしこの肉、美味しい何の肉だろ?鶏肉かな。

 隣は第一王子殿下だが反対隣は補佐官様だ。補佐官様はお肉を食べてない。どうしたのか?


 ザック殿下が「陛下、この肉美味しいですね。淡白な味だが歯応えがあり濃厚なソースとよく合うな」と仰ると、陛下が

 「そうだろ。我が国の南の国境近くのジャングルには大トカゲが生息しておってな。ドラゴンに我が国のペガサスが食べられたと知って、我が国では仕返しとばかりにドラゴンに似た、この大トカゲを食べるようになったんだ」と仰った。

 おおぉう!もう全部飲み込んじゃったぜ。


 通りで補佐官様は肉を残してらっしゃるわけだ。繊細な人だな。食べたら美味しいのにとリリベルは開き直った。

 第一王子殿下もペロッと召し上がっておられたし。


 「ところでペガサスは生きていたかもしれないと、先程仰っていたのではありませんか?」と伯父が尋ねると

 「そうなんだ。西の宰相補佐官を通じて国交を開始するにあたり、南の第二王子と外交官達が我が国を来訪し、まずは(わだかま)りとなっていたペガサスの件を詫びに来た。もうそちらのユニコーンも失われているのと同じで、南の国でも、すでにドラゴンは失われていた。だから我々は元より失われた神獣達の事はお互い水に流し国交を再開しようと思っていた」

 陛下は米酒をグビっといく。大丈夫か?!


 「だが南にはその出来事の伝記が残っていて、伝記によるとペガサスを見つけたドラゴンがペガサスと遊ぼうとしたが、ペガサスが驚いて逃げたので捕まえようと、うっかり翼に噛み付いてしまったとあった。そしてペガサスは怪我を負い西の山の方に逃げて行ったとあったのだ。恐らくペガサスはドラゴンに食べられた訳ではなく、怪我を負ったがどこかで生き延びたのだと分かったのだ」


 伯父が米酒を注ぐ度にグイッといかれるが良いのだろうか?

 「その話は我々には吉報だった。それで直ぐに書庫に出向き、神にペガサスの件をお伝えしたという訳だ」

 「それでは神は新たな司書をお選びになると!」伯爵が興奮して仰る。

 「ああ!きっと間もなくだ。神のお眼鏡に叶う者が出れば、また王家の書庫への出入りが可能になるぞ」陛下も興奮気味だ。

 伯父がせっせと米酒を注いでいるが大丈夫なのか?ザック殿下も心配している。

 

 なんせ我々は米酒の洗礼を受けた事があるからな。

 リリベルは二度も。

 「司書に選ばれる条件はあるのですか?」

 「もちろんある。この国一番の本好きだ!」わぁザックリ。

 どうやって分かるの?

 

 「だから国民は小さい頃から本を読む。皆、神の司書に選ばれたいからな。やっと、やっとだ。もう300年近く司書が選ばれていない。でも私の代で復活するかもしれない」

 陛下は滂沱の涙を流していた。多分、陛下は泣き上戸だ。

 でも伯爵も泣いている。彼の場合なんか違う涙みたいだけど。


 王妃様が「陛下、そろそろ」と仰る。確かに少し飲み過ぎだろう。

 陛下は侍従に付き添われシクシク泣きながら退散して行かれた。

 第一王子殿下もお休みの時間が来たようだ。

 彼は戻る時に、リリベルに明日、遊ぶ約束を絶対守るようにと言って去って行った。

 何でだ!?

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