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4番目の伯父が揃うと、皆で謁見室に向かう。
今回の訪問は私的な用事との事で、大々的にではなく小規模に謁見も行われるとの事だ。また食事会も小規模だから伯父達やリリベルも含めてと仰って下さっているらしい。
謁見室の前まで来ると護衛騎士と侍従のフィリップ様は扉の外で待機だ。
「アイザック殿下、行ってらっしゃいませ」「ああ」
と殿下とフィリップ様のやり取りの後で、フィリップ様と宰相補佐官様の目が合った気がする。
リリベルは詮索するつもりは無かったのだが、つい気が付いてしまった。
まあ学院の時期が被っておられるし、フィリップ様の次の生徒会長が補佐官様だったのだから、ご挨拶くらいは普通だろうとリリベルは気にしない事にして謁見室に入る。
今は王族への挨拶に集中すべきだ。
謁見室には国王陛下とその横に王子殿下お二人、そして王妃様と手を繋ぐ小さな王女殿下がいらっしゃった。
「この度は我々の急な訪問を受け入れて下さり、感謝します」とザック殿下がご挨拶をされ、その間、全員で礼を取り頭を下げる。国王陛下が
「堅苦しい挨拶はここまでで、気楽にせよ」と仰って下さり、皆で頭を上げると
「この度の訪問は、そこの伯爵を頼って3国の神話を調べに来たのだったな?」
「はい。この冬に北の国が、こちらの子爵領に不法に侵入しようとした経緯があり、今後の国同士の交流を考える上で、神々の関係性も改めて調べ直しております」というやり取りが。
なるほど。そういう口実で東に訪問しているのね。
だったら子爵家のリリベルが殿下に帯同している事も、伯爵の兄である伯父がリリベルの後見として一緒している事も正当性があるという事か。
「実は西が南と国交を開始した影響で、我が国もそこの宰相補佐官を通して南との国交を開始したのだが、お陰で吉報が舞い込んで来てな。伯爵が長年、王家の書庫に研究の為に入る事を望んでおったが、やっとそれを叶えてやれそうなのだ!」
それは一体どういう事なのだろうか?王家の書庫って、確か王族しか入れないとか言ってなかった?
リリベルの疑問を他所に伯父である伯爵様が
「それは本当ですか!?とうとう司書様を?」
「ああ知らせを聞いて、やっと外部の者を受け入れる元気が少し出てきたようだ」と陛下も仰るが、会話を聞いても一体何の事か、さっぱり分からない。
ザック殿下も伯父も分かってない様子だった。
宰相補佐官様が「この後、ご説明致しますね」と小声で仰って下さったが、その前に王妃様が「陛下、お客様方が何の話か全く分からないご様子でしてよ」と陛下に仰って下さり「ああ済まなかった。実は長年、亡くなったとされていたペガサスが生きているかもしれないと南から情報がもたらされたのだよ」と説明して下さった。
詳しくは晩餐を取りながらという話になり、晩餐室への移動の前に陛下のご家族にも挨拶をさせて頂いた。
王子様方も第一王子殿下は10歳でまだ可愛い。第二王子殿下も7歳だ。王女殿下は4歳だそうで、リリベルを見て「王子様だ!」と仰った。
王子はあっちの赤い方だが…本物も苦笑いだ。
王妃様が「絵本の王子様に金髪が多いからゴメンなさいね」と仰る。確かに絵本の王子は皆、金髪だな。
陛下が「なるほど。外見からして、そなたは北の王家の血筋なのだな。しかも3代前が我が国の王女であったとか」
伯爵が「恐れながら陛下、我々の3代前も同じ王女殿下なので御座います」と伝えると
「アイザック王子、そなたらの4代前も同じ王女であろう?おかしな縁だな」と言って笑った。
伯父もリリベルも気にしないの?って陛下を見ると
「当時の女性にしては、あちこちに種を残すなど、なかなか大胆な女傑であったのだな。確かに美しい人だったらしいが」と仰った。
撒いた訳ではないだろうが結果的にはそうなのか?
東の国王陛下もあっけらかんとした方で良かったとリリベルは思った。
それから晩餐の為に謁見室から移動するが、リリベルはすっかり王女に気に入られ、王女殿下と手を繋いで移動する。
もう片方の手は何故か第二王子殿下だ。どっちも可愛いからいいけど。
王妃様が「この国は金髪の人が少ないの。だからあなたが珍しいんだと思うわ」と仰った。
残念ながら晩餐室に到着すると第二王子殿下も王女殿下もお別れだ。お二人はまだ小さいので乳母達に連れて行かれる。
「明日、絶対遊ぼう!」と約束させられ別れた。マジか!
第一王子殿下はそのまま残られた。
彼は陛下や王妃様と並んで座られるのかと思ったら、なぜかリリベルの隣に座った。
リリベルが「何で?」という顔で彼を見ると、殿下は
「妖精殿は男性なのか?女性なのか?」と尋ねてきた。
王妃様が「ゴメンなさいね。絵本の妖精って金髪が多いでしょ?この国は金髪の人が少ないから」「珍しいんですね?」と言うと
「そうなのよ。オホホホホホ」と笑った。
何かクセあるな、ここの王族ってリリベルはそう思った。
そして殿下方は絵本を読みまくっているんだな。
さすが図書館が各村や街にある国だわと感心した。