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放課後リリベルは校舎の裏庭の花壇で、いつものように花の苗を植えていた。今日は同じクラブの男爵家の先輩と、同じく男爵家の同級生とご一緒だ。
裏庭は目立たないからインゲンを植えても分からないかな?なんて考えていたら、上級生の令嬢達に囲まれてしまった。
最近、クラスや同学年の令嬢達とは上手くやっていたから油断していた。
学院の裏庭は危険地帯だって入学前に学院内地図に兄と一緒に赤丸したのに!!
「リリベルさん、あなた男性を2人も侍らせて、意気揚々と花なんか植えちゃって良いご身分ね」
1人の侯爵令嬢がツンとした感じで言ってくる。
リリベルはハッとして両隣りを見る。2人とも男爵令息じゃん!
「今はクラブ活動中です。それに植物の話しかしていません」
両隣りの令息達もウンウンと頷いている。
侯爵令嬢の横にいる伯爵令嬢が、
「あら、私達にはそうは見えなかったわよ。きっと殿下にもそうやって無害そうに言い寄っているんでしょう?なんせあなたのお姉様は」と言って扇子で口元を隠す。
令嬢達の剣幕に令息2人はビビって動けない。そもそもお花大好きなラブリーな令息達なのだ。リリベルの中では完全に令嬢認定されていた。しかし上級生には預かり知らぬことだ。
その時だ、
「彼女の姉は聖女だが、聖女の姉がどうしたんだ?」
って殿下が急いだ様子でやって来た。
「まあ殿下、私達は聖女様じゃなくて、一番上の姉君の話をしていたのですわ」と、リリベルを睨んでくる。
「そうか、男爵夫人は今回、私の姉と南の隣国との婚姻をまとめてくれた立役者だが、その彼女が何か?」
ララ姉!?そんなことをしたの?
でも殿下は姉君の婚姻に付き添って南の隣国に行かれてたんだものね、内情を一番知っている人のはずだ。
殿下の話に令嬢達は顔色を失って怯み出す。
「私達、リリベル嬢の姉君を誤解していたようですわ」
いや誤解じゃなくて、まんまだと思うけど。でも今は男爵様一筋だよ。
「でもリリベル嬢自身はどうかしら?今もお2人の男性を侍らせてらっしゃるようですけど」
まだ反撃するんだ?
その時だ、第二弾、
「僕達、付き合っているんです!」男爵令息達が言う。
いいのか?こんな所でカミングアウトして。
「僕達が今から植える花、来年の春に咲く予定なんです。彼の卒業式に間に合えばって…」
同級生の男爵令息が顔を赤くしてモジモジする。あ〜皆、これ可愛いって思ったよね絶対。
「リリベル嬢は土魔法が上手いから、一緒に植えて欲しいって僕達が頼んだんだ。だからリリベル嬢はそんな人じゃないよ。むしろ男気があるんだ!」
おい!それ褒めてないぞ。
殿下が「ブフッ」と吹き出した。失礼な!と睨む。
それを見て令嬢達も毒気を抜かれたようで呆然と立っている。
その時だ、第三弾、
「何をしているんですか?呼ばれたから来てみたけど、殿下まで」
と生徒会長まで他の役員を連れてお見えになった。
「校舎の裏でリリベルさんを囲んでリンチ的な?」
シャーロット、今はその発言はヤバいよ。
それに彼らを呼びに行ったのはあなたですか?!