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王都に到着し、まずは王城に迎えられる。
東の国の王城も自国とそう大差ない規模と雰囲気だった。
東の国王陛下は即位して5年のまだ若い王だ。お子さん達も一番上が10歳の王子殿下とまだお小さい。
良かった!リリベルが王女殿下を“偽物の令息”で追い払う必要がなくて。いや王女殿下なら追い払わなくていいのか?と、どうでも良い事を考えながら、国王陛下に会う前に先に我が国の宰相補佐官様と会うために、控えの間に向かう。
護衛の騎士様もリーダーともう一人、そして侍従のフィリップ様だけがご一緒して、あとのメンバーは王城の職員の待機室で一旦待機だ。
控えの間に到着してノックすると、中から扉が開いて侍女らしき方が中に通してくれる。
中に入ると、髪を纏め背筋のピンと伸びた知的でクールビューティーな女性が立っていた。
女性は殿下に礼を取り「第三王子殿下、ようこそ東の隣国まで起こしになりました」と挨拶をされた。
「宰相補佐官殿、顔を上げてくれ。東に滞在中は世話になる。こちらでの役目もあるだろうに迷惑を掛けるな」と殿下が仰ると
「いいえ第三王子殿下、既に私の仕事も終わるところでしたので、この機会に帰国命令が降りました。帰りはご一緒させて頂きます」とクールビューティーが仰った。
そして「伯父様もようこそ」と伯父に挨拶し、リリベルにも
「従姉妹殿も初めましてね?ん?あら叔父様のところの末っ子の令嬢がいらっしゃる予定だったのでは?」と首を傾げて仰ったので
「このような格好ですが、子爵家の三女のリリベルです」
と挨拶を返すと「まあ!」と驚かれた。
伯父も「色々あってね。リリは第三王子殿下の側近なのだが、令息姿の方が令嬢が快く退散してくれてね。ここに来るまでにも3人の令嬢が穏やかに引き下がってくれた」と説明してくれた。
補佐官様も納得してくれたのか
「第三王子殿下はまだ婚約者もおらず、魅力的な方ですから仕方ないですわ」と仰った。
「補佐官殿、私の事はザックと呼んでくれ。あと子爵令嬢はこの姿で謁見はまずいか?」と聞いて下さった。
「国王陛下は気さくな方ですし大丈夫ですわ、きっと。それに今日は、もう一人」と仰ると、ちょうど扉がノックされる。
侍女さんが扉を開けると「兄さん!久しぶり!」と言って入って来たのは4番目の伯父と思われる男性だった。
「ああ久しぶりだな。だが第三王子殿下の御前だぞ!」
「!」男性は驚いて「これは第三王子殿下、お見苦しい点を見せましたな。私はこの国で伯爵を戴いております。元は西の国の出身でした。東の国へようこそ」
と礼を取り仰った。変わり身早いな。流石、父の兄弟だ。
でも4番目の伯父も父とはあまり似ていない。
「伯爵、構わない。久しぶりの兄弟の逢瀬だろう?それにこちらでは世話になるな。宜しく頼む」と殿下が仰ると、4番目の伯父は殿下に礼をした後リリベルに目を留める。
「ベルモントにそっくりだ。私がこちらに来る前に別れた時の弟のまんまだ!」と言って盛大にリリベルを抱きしめた。
リリベルが驚いていると、伯父が
「おい、これでもこの子は令嬢なんだぞ」と言うと
「え?そう言えば末っ子の令嬢と来るって兄さん言ってたな」ってリリベルをマジマジと見てくるので、リリベルは一応
「子爵家の三女のリリベルです」と挨拶しておいた。
4番目の伯父は「そりゃあ、これだけ可愛かったら令嬢の格好はヤバいよな〜」と、なんか違う勘違いをしてくれたが、私も伯父も面倒臭かったので黙っといた。
おいおい話せばいいだろう。