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誤字報告ありがとうございました。

以前、ご指摘頂いた漢字をまた間違えてしまいました。恥ずかしい限りです。

お礼に1話。

 「リリベル、子爵領から手紙が届いた。どうやら北の者が頑張ってマラカス1世の日記を解読してくれたみたいだぞ」

 「本当!?伯父様はもう読んだ?」

 「ああ…だが、全部は難しくて飛び飛びの内容を何とか繋げたからおかしい内容もあるかもしれないそうだ」

 あと…この頃から子爵家って変わってないんだなと思ったことは言わないでおく。


《マラカス1世 日記》

 女神の夫になるのが嫌で夜通しスネイプニルに跨って、やっとの思いで北の国から逃げて来た。逃げた先には穏やかな緑の草原が広がっていて“逃げ延びた”という実感が湧いた。

 草原には一人の少女がいて、突然、現れた私を驚いたように見ていた。そうだよな、こんな所にいきなり北の人間が妙な馬を連れて現れたんだから、ただの不審者だ。

 驚いて逃げ出して騎士に通報されるだろう。だが北にさえ引き渡されなければそれでいい。それぐらいの交渉はできるといいが。

 でも少女はそうしなかった。それどころかこちらに寄って来て

 「わぁ王子様だ。これあげる」って花束ではなく、ワラビの束をくれた。少女は山菜採りに来てたんだな。

 そして後に知るが、この地方では未婚の男女が食料を相手に贈る行為は求婚だったのだ。

 少女はこの土地を治める子爵家の娘だった。柔らかいハニーブロンドの髪に緑の瞳。顔にはソバカスが散っていたが笑うとすごく可愛い。そして纏う空気がとても温かい。

 私は彼女のことが直ぐに気に入った。女神はとても美しいがゾッとする氷のような美しさだ。私の周りにはそういう女性が多かった。

 私はきっと彼女のような温かい女性を求めていたんだな。私は彼女に連れられて子爵家に向かう。

 ここまで一緒に来てくれたスネイプニルには感謝を伝え自由にしようとしたら、娘が「そういえば森に白馬が住んでるよ」と言った。

 北に戻ろうとしていたスネイプニルは瞬間、グルンッと引き返し森に入っていった。あれから森で白馬の番を見るから、スネイプニルも居場所をここに決めたんだなと思った。

 子爵家に着くと子爵家の者達は驚くほど暢気だった。

 「おや?カスタネット、婿を連れて帰って来たのかい?」と。

 こいつら捨て猫も、捨て犬も拾う奴らだなと思っていたら、領主は

 「怪我した馬の次は人間かぁ」と言った。

 馬も拾ったのか!!

 「でも馬はちゃんと森に帰したでしょ」って言って私を見る。

 私も帰すのか?

 私の目が困っているのを見た少女は笑って「帰さないよ。拾った人が決めることでしょ」とそう言った。

 そうして私はこの家のカスタネット嬢と結ばれた。彼女と結婚して娘が産まれた。娘はタンヴァリンと名付けた。ある日、カスタネットが驚いて言った…

 私は女神の呪い〜 


〈兄上へ、リリベルへ、〉

 マラカス1世の日記はここで終わっている。

 彼は一体何を書きかけたのか?カスタネットは何に驚いて何を言ったのだろうか?

 マラカス1世が北から逃げたことで女神の呪いにかかっているのか?それは何に誰に対して、どこまでなのか?

 肝心な事は全く分からない。

 もし何かの呪いにかかっていたとしても、子爵家の人々は代々、分かっていないか気付いてないようだ。

 北の国に行けばこの謎も解けるのかもしれないが、暢気な子爵家の人々は困ってないみたいだしな。僕も気にならない。

 まあ確実に分かった事は野生馬はスネイプニルの子孫だ。

 そしてマラカス1世のせいで子爵家では北の移民を無条件で受け入れる事になったくらいだ。


 春に東に行くんだってな。4番目の兄さんに宜しく言っといて。じゃあな。


「すごい。父様いつもより雄弁」

「リリ、感想がそっちの方か?」


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