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 「アハハハッ」久しぶりにマレシアナはお腹を抱えて笑った。

 「姉上!笑い事ではありません!」

 「それであなた方は謝ったという訳ね」


 公爵令息と第三王子を謝らせるとは。

 相変わらず場の掌握術を分かっている。窮地を逆転させる機転と知恵が面白いと言わざる得ない。

 しかも昨日までの敵を味方に引き込む力も侮れない。これは排除したり敵に回さず、こちらに引き込みたいものだなとマレシアナは考える。

 

 しかし男装の為に髪まで切ってしまったのか。そんな大胆な行動力も嫌いではないが。

 マレシオンがうっかり口を滑らせるほど動揺したのか。まあ令嬢が騎士でもないのに男装することもない。ましてや長い髪を切ることなども。

 今回は彼が謝っても仕方ない失態だったのだろう。


 さてどうやってリリベル嬢をこちら側に引き込もうか?

 アイザック殿下の婚約者にしてしまうのが一番だが、簡単にその地位には収まらないだろう。周囲の貴族よりも彼女の親戚の高位貴族の反発の方も脅威だ。

 アイザック殿下に頑張ってもらいたいが、彼自身もまだその気が無い。

 ライバルはきっと多いはずだが。


 まあ殿下には良い刺激を与えているのは間違いない。

 彼は、このまま順調に育って欲しい。

 リリベル嬢には彼をできるだけ長く導いて欲しいものだ。


 「それより義姉上、リリベル嬢が春休みに東の隣国に行くそうなのです。それで、私も一緒に行ってはダメだろうか?三国が一つの国だった頃からの神話を研究している人に会いに行くそうなんだ」


 「殿下が行かれるなら、あちらの王族にも挨拶に伺わないといけませんが、それでも良いのですか?」

 「それは…当然だな。ちゃんとやるよ!」

 「リリベル嬢が子爵家と野生馬や北との関わりについて知りたいという気持ちは分かります。ですが殿下は何のために行きたいのですか?ただの遊びや好奇心では許可できません」


 「そうだよな。義姉上…俺は何で行きたいんだろう?」

 アイザックは真剣な様子で考えている。


 「義姉上、単純な理由なんだ。ただワクワクするんだ。彼女といると俺が知らなかった事を沢山見れて、知れて楽しいんだ。それに勉強になる。リリベル嬢は賢いだろう?今日だって、まさか一瞬で高位貴族の令嬢達を味方につけて、俺達を悪者に仕立てるなんて思いもしなかったんだ。あの知恵の回し方を学びたい!」


 ふむ。アイザック殿下は、ちゃんと感じて理解しておられるんだ。

 「良いでしょう。殿下」「本当に!?」

 「ですが殿下にはこれから王太子教育も受けてもらいます。もう王族教育は終わると聞いているので、ちょうど良いはずです」

 「分かったよ」

 まさかこんなに素直に聞くとは思わなかったな。マレシアナはほくそ笑んだ。


 「ザック殿下」「どうした?マレシオン」

 「私はもう一度ちゃんとリリベル嬢に謝ろうと思います。彼女に監視を付けたことも、リリベル嬢が髪を切った事に口出しした事も、彼女が望まない事をしたのは明らかですから」

 「でも監視はあの時は必要だっただろ?」

 「ええ。ですが私が口を滑らせてしまってリリアン嬢の立場も悪くしました。なので詫びるのが筋でしょう」

 「そうか。俺も一緒に行こうか?」

 「いいえ、殿下は監視の件は知らなかったのですから。きちんとそれも説明してきます」

 「ああそうか。悪いな」

 「では殿下失礼致します」と、そう言ってマレシオンは去って行った。

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