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前世も異世界転移もありません!ただの子爵令嬢です!多分?  作者: 朱井笑美


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 「シャーロット嬢、泣き止んで。もう実技試験が始まるわ」

 さっきから大泣きするシャーロット嬢を、ダイアナ様とジャスミン嬢が必死に慰めている。シャーロット嬢の大興奮の理由は侯爵令嬢達とは違う。

 「ヒロインがヒーローになってしまった」が理由だ。

 そんなの知るか。


 後から登校してきたザック殿下は、まだ気付いていなかった。

 「リリベル嬢はどこだ?」的な仕草を見せていたが髪を短く切ったリリベルに始業まで気付く事がなかった。

 そんなにイメージが変わったのだろうか?


 3組は今日は午前いっぱいを使ってダンスの実技試験がある。

 他のクラスは別の実技試験中だが、それで全ての試験日程が終了となり、終業式までの日程は期末試験の筆記、実技共に赤点者の補講日となり、呼ばれなかった者は自習になる。

 終業式の後、卒業式で最高学年を送り出した後、約1か月の春休みにはいる。


 期末試験の結果は前期授業の始業式にクラス分けと一緒に発表される。上位30名が1組だ。その後、新入生の入学式という流れになる。

 早いもんだ。もう一年も経つのかと思うが、思い出に耽るのはダンス実技試験が終わってからにしないと。

 

 最初のダンスは男性暫定1位のザック殿下ペアからだ。

 次に暫定2位、3位と実技試験が続くので、リリベル、男爵令息ペアは最後のダンスだ。試験中は他のペアの見学をする。

 トップはなかなか緊張するだろうが終わったら、もう緊張とはおさらばだから羨ましい。2回、3回踊る令嬢も次第に緊張に慣れて持ち前の実力を出せるようになる。


 殿下と伯爵令嬢が教室の真ん中に立って礼をしてダンスの構えを取る。音楽が流れ始めたら採点開始だ。

 採点は担任、ダンス教師が主にするが、客観的にダンスを見る学院長、副学院長や学年主任の誰かが加わると他クラスから情報を得ている。

 このクラスには殿下がいらっしゃるので、恐らく学院長が来るだろうという皆の予想は当たっていた。しかし皆、採点者ぐらいでは動揺しないぐらい練習を重ねている。


 殿下、伯爵令嬢ペアは良い踊り出しだ。令嬢もあんなにドタバタだったのに今はパタパタくらいで踊れている。

 更に令嬢はゼイゼイ言うことなく笑顔で殿下のリードに応えている。よくここまで頑張った。頑張ったのは令嬢だけじゃない。

 令嬢の体力作りに毎日付き合った殿下も凄い。あんなに太ましい令嬢を危なげなくリードし、かつターンではブレないようしっかり支えている。

 そして何より皆が崇拝する“お胸様”が殿下にビシバシ当たっても、殿下のスマイルにはヒビさえ入らない。

 どこかで令息の「凄い」という感嘆の囁き声が聞こえる。

 他の皆もそう思うのか首を縦に振っている。リリベルもそう思う。

 ラストはポーズを決めて終わりだ。


 二人のポーズも決まり音楽が終わった直後、皆で拍手をする時にそれは起こった。

 令嬢が安心したのかポーズを解く瞬間グラつき殿下に向かって倒れかかったのだ。

 殿下も直ぐに気付いて支えようとしたが、支え切れず殿下を下敷きにして令嬢がバターンと倒れてしまった。

 なんと殿下は令嬢に潰されてしまった。

 主にお胸様に。本来なら鼻血もののラッキースケベだろう。

 しかし令嬢のメロンは凶器だった。


 殿下は胸に潰され窒息しかかってしまったのだ。

 「息!息できない…」殿下はメロンにギブアップしたが、直ぐに大勢に助け出されて一安心だった。

 何よりダンスを踊り終わった後だったから試験にも影響が無く本当に良かった。

 初っ端からハプニングはあったが、それからドンドン試験が進んで行く。


 最後に踊るペアは本来、緊張で心臓が喉から出そうになるだろう。

 しかし男爵令息は落ち着いていた「いつものダンスだもんね」と嬉しそうに言って。

 「そりゃあ私が全面的にあなたに添いましたからね」とリリベルは思うが仕方ない。

 彼が男性パートを踊るのは所詮無理だったのだ。


 あんなに泣いていたシャーロット嬢も立派に踊り切った。

 ダイアナ様も、侯爵令嬢も素晴らしかった。

 さすが高位貴族だ。きっと高得点だろう。

 そうしてトリのリリベル男爵令息ペアだ。


 担任もダンス教師も、学院長も殿下も驚愕に目を見開いている。

 リリベルが男性パートを踊ることは事前にお伝えしていたはずだが…あぁ髪型の事か。

 

 ザック殿下、今、気付いたの?

 よっぽどメロンの下敷きになった事が衝撃だったのだろう。

 しばらく「メロンに負けた」って呟きながら、ボーッとしてたもんね。

 酸素行ったかな?と少し側近として心配にもなった。

 だけど心を鬼にしてダンスに集中するのだ。

 さあ頑張るよ!

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