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男爵令息が女性パートで踊っても違和感は無いが、彼が令嬢っぽいのは女兄妹に囲まれて育ったせいなのかと思っていたけど、実はその逆だった。
兄が3人いる男兄弟だったのだ。
母親がどうしても娘が欲しかったせいで最後の彼が犠牲になったらしい。
「誰も止めなかったの?」
「だって僕、可愛かったから」
「いや、今でもめっちゃ可愛いよ」
「僕より可愛いリリベル嬢に言われると嬉しいな」
そうか可愛いって言われて喜んじゃうんだな。もう身も心も令嬢なんだ。
そもそも彼氏もいるしな。
だったら今後、彼が踊るのも女性パートだけだろう。
リリベルは心を決めた「私が男性パートを覚える方が早いわ」
「えっ!リリベル嬢いいの?」
「仕方ない。課題のワルツをマスターするわ!」
「リリベル嬢カッコイイ!令息なら惚れる」
やっぱり恋愛対象も男性なのね…。
それからリリベルは生徒会室で皆がテスト勉強をしている横で、生徒会長や勉強が終わった令息から男性パートを教わった。
「リリベル嬢、男爵令息との身長差はありますか?」と生徒会長に聞かれる。
「恐らくあまり変わりません」いつも目線が近いしね。
「ならそこまでリードに困らないでしょう。彼の方が大きければターンなど一度手を離さないといけませんしね」
そうか!「男性パートのアドバイスは初めて聞きます。有難いです」
「いや、普通、ダンス教師を目指さない限り聞かないからな」
「いつか職にあぶれたら、その道を目指せますね」
「リリベル嬢、ダンス教師を職にあぶれた人みたいに言ったらダメですよ」
その通りだ。自分は視野が狭いと反省する。
「さあ頑張りましょう」と、ご自身もテスト勉強があるのにダンスに付き合ってくれる皆様に感謝だ。
ザック殿下も頑張っている。
今、生徒会室の下をマラソンで走り抜ける二人が窓から見えた。
お胸様が揺れてた…。容赦無いな殿下も。
「そうだ、リリベル嬢、制服は殿下が入学時に着ていた制服が借りれるか聞いておいてあげます。確か入学時は同じくらいの身長でしたよね?」と生徒会長は仰って下さる。
「わぁ助かります。ありがとうございます」そうだ男性の装いまで考えてなかった。
なら男爵令息の制服はリリベルのを貸せばいいか。でも彼の方が細くて華奢かもな…。
侯爵家にララ姉のがあったかも。休日に探してみよう。
ダンスレッスンを始めて男爵令息の女性パートのダンスの技量を確認する。
うん。これは振り付けに関しては指摘する部分はあまり無い。
あとは体幹がブレない事と笑顔と見せ方だ。
解決の糸口が見つかると嬉しいもんだ。
試験まであと2週間、ラストスパートだ!