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あと20分程で午後の授業が始まる。仕方がないのでリリベルは仕入れたオニギリを殿下に渡して教室に戻った。
ちゃんと学院の“手作り安心マーク”が付いているから殿下も食べれるだろう。“学院手作り安心マーク”は魔法が込められたシールで毒、薬物回避、品質劣化防止の魔法が消味期限までは大丈夫と保証してくれる代物なので王族や高位貴族でも安心して食べられる。
あ〜あ、せっかくの楽しいはずのランチ休憩がプチサバイバルをした後の気分になってしまった。
学院って本当に油断ならない所なのね。あと2年以上もやっていけるのかな〜と思いながらリリベルは午後の授業を受けた。
殿下も無事に授業に間に合っていた。良かったね。
夏も近付いて学院中の庭や花壇には園芸クラブのお陰か、色とりどりの花が美しく咲いていた。
もちろんリリベルが控え目に植えた野菜達も順調だ。バレないように主に根菜が多いのが残念だ。
しかし、すでにブルーベリーを植えてある。ブルーベリーは花も実も可愛いから誤魔化して生きていけるはずだ。
夏が楽しみだ。夏野菜を仕込みたいがキュウリは危険か?カボチャはダメだなカボチャを危険に晒したら爺様に怒られる。
リリベルが通りがかりのベンチに座り悩んでいると、
「何を考えているんだ?」
って隣に座っている人に声を掛けられた。
「ええっ!殿下!何で隣に座っているの?」
「俺が先に座ってたら、お前がやって来て何やら考えながら隣に座ったんだよ」と仰った。
ガーン!こんなに赤い人を見落とすなんて。とリリベルが驚きで目を見開いていると、
「お前、何か見た目と性格、全然違うんだな」
「それに最近発言にも容赦が無い気がするし」
リリベルは背中に冷たい汗を感じながら、
「こここの先、静かに余生を過ごしますので、どうか父と祖母には内緒に…」と、しどろもどろに言う。
「? 一体、何の話だよ?」
「そうだ、この前のオニギリありがとう。助かったよ。やっぱり学院内では側近を置くことにしたわ。令嬢達、マジで怖いし」
って仰る。
「自由に過ごしたいってクラスも1組以外にしたら、他の高位貴族にも影響出ちゃって、逆に皆を混乱させたよな」と仰った。
確かに混乱しましたね私。
「殿下も言葉遣い、普段と違いますね」と言ったら、
「王族だって普段はこんなもんだよ」って仰った。
だからって“私の前だけ普段の殿下!ハート”なんて思いませんから安心して下さいね。
「そうだ、王城の料理人が作ったクッキー、オニギリのお礼に持って来たから、後で侍従からもらってよ」と仰って殿下は去って行かれた。
「いー雰囲気でしたねぇ。でも逆クッキーですね」
出た!シャーロット。いつからどこから聞いていたんだ、
この“自称モブ”め。