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「ねえ、真野さん」
だいぶ身体の自由が効くようになって、真野さんの胸の上で呼びかけた。
「ん?」
私の髪をすきながら、真野さんが応じる。
「何ともないんですか?」
「何が?」
「だって、私いま、真野さんに呪いをかけたのに」
一生、愛します、なんて。
これ以上ない、呪いの言葉だ。
「あ」
真野さんが思い出したように手を止める。
「ふふ、襲いたかったらどうぞ」
いたずら心を出してそう言ったら、頬を軽くつねられた。
「呪いがかかったなんて嘘だ。一瞬ビビったけどな」
頬をつねった指で、今度は私の頬を撫でてくる。
「悪かったな。呪いのことを持ち出すなんて、冗談にしてもタチが悪かった」
私の目をまっすぐに見つめて、謝ってくる。
ああ、やっぱり私、この人のことが好きだ。
「いいですよ」
しおらしく謝る真野さんがかわいくて、ますますいじめたくなった。
「呪いをダシにするくらい、私とシたかったんでしょ?真野さんって意外と自制心ないですよね」
「お前な。俺がどれだけ我慢……」
「え、わっ」
体勢が逆転して、真野さんが上になる。
「自制できないから、もう一回してもいいか?」
その目が本気っぽくて、慌てる。
「だ、だって、満足したって……」
「もう足りねえ」
「ちょっ、もう無理、真野さん……んむっ」
思わず目を閉じたら、キスが落ちてきた。
目を開けると、真野さんは笑みを含んだ瞳で私を見下ろしていた。
「か、からかったんですか?」
「何がだ。キスの話だぞ。何だと思ったんだ?」
「き、嫌い」
「俺は好きだ」
嘘をつく私ごと抱きしめるみたいに、真野さんが囁く。
「ずっと我慢してたんだ」
その甘い瞳が、次の言葉を予告している。
もうひとつ、キスを落としたあとで。
「やっと、愛してると言える」
完




