3
「……そうだな」
しばらくして、落ち着きを取り戻したように真野さんが言った。
「確かにお前は大丈夫そうだ」
お前は?
小さな違和感を覚える私に、真野さんが続けて言う。
「俺は今、猛烈にムラムラしてる」
「は?」
「お前の言うとおり、呪いにかかっているのは俺の方なのかもしれない」
いや。
いやいやいや。
「私、呪いにかかってたから分かります。本当に呪いにかかってたら、そんな落ち着いてられないです。もっと、何も考えられなくなって、どうしようもなくなりますから」
私が必死に否定すると、真野さんは目を細めた。
「お前と違って、俺は自制心が強いからな」
「そんな問題じゃーー」
「ああ、もしかしてお前、アメリカで他の男と付き合ったりしたか。それなら確かに違ーー」
「してないです」
呪いを否定するチャンスではあったけど、嘘はつきたくない。
真野さんの目がさらに細められる。
「何だよ。5年も行ってて、一度もそういうことなかったのか。別にいいんだぞ?お互い忘れてたんだから」
「じゃあ、真野さんはーー。いいです、聞きたくない」
真野さんも誰かと付き合ったりしたのかと聞きかけて、慌てて撤回する。
聞いたって、悲しくなるだけだ。
「馬鹿だな。そうか、お前、男のことになると馬鹿になるんだったな」
真野さんは、堪えきれなくなったように、忍び笑いを漏らした。
「何だよ、大学辞めるって。思い詰めすぎだろ」
「ひどい」
真野さんの手から抜け出して、立ちあがろうとした。
でも、それより早く腰を掴まれて、逃げられなくされる。




