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愛してるって言わないで  作者: Mariko
聞こえない
8/89

7

 アオイは、左腕で私の身体を抱きしめたまま、私のスマホを持つ手を持ち上げて、勝手に文字起こしアプリを起動させた。


 画面上に文字が入力されていく。


『今から僕がすること、嫌だったら言ってください』


「え、何する気?」

 私がそう尋ねても、それっきり文字が増えることはなく、その代わりに私のトレンチコートのボタンとボタンの間にアオイの手が潜り込んでいく。


「ちょっと。やめてよ、こんなところで」


 私たちがいるのは、そこそこ人通りがある道の真ん中だ。すぐ横の車道では車がバンバン走っている。


「アオイ、何考えてるの」


 腕を掴んで阻止しようとしているのに、私の胸をまさぐるのをやめない。それどころか、首元に吸い付いてくるのを感じる。

 やがて、アオイのひんやりとした指が下着の中に侵入してきた。

 

 いくらアオイでも、感じてしまうーー。

 胸が弱い私は、そう思って身構えたけど、不思議なくらい何ともなかった。

 むしろ、不快なくらいだ。

 アオイの声を拾うためにスマホを見ているせいで、周りからは自撮りしてるように見えるのではないかと、恥ずかしく思う余裕すらある。


「ねえ、やめてってば」


 その時、アオイが耳元で何やら喋ったのが分かった。

 慌ててスマホの画面を見る。


『来ましたね』

「何がーー」

 胸から手が抜けて、あっさり解放された。

「な、何なの、いきなり」


 アオイは、楽しそうな表情を浮かべていた。

 私のスマホを指さしてくる。


『嫌でした?それとも、良かった?』

 画面にそう表示されていた。

「馬鹿じゃないの」

『嫌だったら言ってって言ったのに、橋本さん、嫌がらないから』

「やめてって言ったでしょ」

『その割には、抵抗少なかったですよ』

 

 反論しようと思ってアオイを見上げると、ニヤニヤしていた。

 確かに、嫌ではなかった。

 でも、勘違いされたくなかった。


「少なくとも、良くはなかったから。自分でもびっくりするくらい、何も感じなかった」

『へえ。それは面白いですね』

「あんたねーー」


 私が何かを言いかけたのを遮って、アオイは顎で私に後ろを向くように促した。

 促されるままに振り向いた私は、そこで絶句した。

 真野さんが、すぐ後ろに立っていた。


 今の、見られただろうかーー?

 

 いや。

 見られてようが、何だっていい。

 この耳じゃ、真野さんとは付き合えない。

 こんな私、愛されてはいけない。

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