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「あ、ああ、あれか。あれだよな」
真野さんがうわずった声で言う。
「反対言葉を喋ってるんだな。そうだろ。俺のことが嫌いすぎてどうしようもないって、そう言いたいんだろ」
「え、いや……」
「否定しなくていい」
私に反論の隙を与えないまま、真野さんは続ける。
「あれだろ、プリンもキモかったよな。悪かったよ、変なことして。もう近づかないから」
「待って、真野さん」
立ちあがろうとしたのを、呼び止めた。
「ひどい。ひどいです。そんなフり方ってないです。私も急にこんなこと言って悪かったですけど、本気なのに」
反対言葉を喋ってるとか、意味不明だ。
好きなら好き、嫌いなら嫌いだと伝える。
そんな当たり前のことすら揺らぐなら、世界が壊れてしまう。
「そりゃ、こっちのセリフだ」
真野さんが私から顔を背けて言う。
「お前、俺の気持ちに気づいてるんだろ。それで、遠回しにフッてるんだろ。嫌なら嫌だってはっきり言えよ。こっちは勘違いしそうになる」
「真野さんの気持ちって、何ですか?」
勘違いって……?
「もしかして、真野さんも私と同じ気持ちってことですか?」
我ながら都合の良い解釈だ。
そう自覚しながらも、確かめずにいられない。
「お前……」
身を乗り出す私を見て、真野さんは戸惑ったようだった。
「まさか、本気で言ってるのか?」
頷く。
私のどの発言のことを言っているのかは分からないけど、とりあえず全部本気だ。
「本気で、俺のことが好きだから大学辞めるとか言ってんのか?」
真野さんが、念押しするように再び確認してくる。
「はい。本気で言ってます」
「何でだよ」
間髪入れずつっこまれた。
「だって、好きすぎて迷惑かけちゃう」
「馬鹿なのか」
「馬鹿じゃないです」
「馬鹿だろ。そんなことで辞めるとか」
「ひどい」
本当に、ひどい。
こんなに悩んでるのに。




