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「すみません、ウザ絡みして」
やっと理性が降りて来て、頭を下げた。
「ああ。酔っ払ってるだけだよな」
真野さんはホッとしたようだった。
そりゃそうだ。こんなの、面倒くさいだけだ。
「私、大学を辞めようと思います」
覚悟を決めて、そう宣言した。
このままじゃ、みんなに迷惑をかけてしまう。
私は指導官の立場なのに。
真野さんは、すぐには何も言わなかった。
理由も聞いてくれないんだと思って、心が壊れそうになった。
「やっぱり、何かあったんだろ」
腰を浮かしかけた私を引き留めるように、真野さんは優しい口調で言った。
「学生にまた何か言われたのか。気にするなと言っただろ」
「違います」
真野さんの勘違いに気づいて、即座に否定する。
学生に陰口を叩かれるのはつらいけど、そんなことで辞めようとは思わない。
真野さんにそんな弱い人間だと勘違いされたまま、別れたくなかった。
「じゃあ、何があったんだ」
まっすぐに見つめられて、目を逸らした。
一緒にいたい。
一緒にいたくない。
「言いたくないなら、言わなくていい」
真野さんがスッと遠のく気配がする。
「ただ、俺に変に気を遣っているのだとしたら、許さないからな」
「真野さんのせいです」
言うまい、言うまいと思うのに、口が言うことを聞いてくれない。
「俺のせいか」
真野さんが傷ついた顔をする。
「好きです」
教えてほしい。
この想いを押し留める方法があるのなら。
「真野さんのことが好きで、大好きすぎて、もうどうしようもないんです」
私の告白に、真野さんが短く息を吸うのが分かった。
引かれた。
こんな、研究室に私情を持ちこむような人間、真野さんは一番嫌いだろう。




