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愛してるって言わないで  作者: Mariko
忘れられない
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2

「こんなところにいたのか」


 砂を踏む靴の音とともに真野さんが現れた時、これも願望がみせる夢なのかと疑った。


「どうした。体調でも悪いのか」

 ぼんやりと見上げていると、真野さんが心配そうに私の隣に腰掛けてきた。


 夢でもいいから覚めないで。

 

「私を探しにきてくれたんですか?」

 暗い色に戻った海を眺めながら尋ねる。

 1秒でも長く、一緒にいたくて。


「恭子さんが探しに行けってうるさかったんだよ」

 真野さんはそこで思い出したように、スマホを取り出した。

 恭子さんに連絡するつもりだろう。

 

「真野さんって、恭子さんのこと、名前で呼びますよね」

 こっちを見てほしくて、いじけてみせた。

「私のことは橋本さんなのに」


 昔から思っていたことだけど、口に出して言うつもりはなかった。

 理性の歯止めが効かない。


「何だそら」

 スマホから顔を上げて、真野さんが呆れた声を出す。

「お前だって恭子さんって呼んでるじゃねえか」

 至極まともなツッコミを入れた。


「恭子さんはラボ内で結婚したから、旦那がラボを出た後も恭子さんって呼ばれてたんだよ。お前も知ってるだろ」


 真野さんが、私を宥めようとしてか、名前呼びのわけを丁寧に説明してくれる。

 だけど私は、そんな説明を求めているわけではなくて。


「じゃあ、橋本って人がもう1人いると思って、私のことも名前で呼んでください」

「何でだよ。いないのに呼ぶ訳ないだろ」

「じゃあ、どこかから連れて来ますので」

「どうしたんだよ、お前」


 亜希ーー。

 真野さんの声が、耳に残って離れない。

 私は、どうかしている。

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