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愛してるって言わないで  作者: Mariko
思い出せない
75/89

6

「そうか。悪かったな、俺の指導不足だ。気にするな」

「え?何のことですか?」

 意味がわからなくて聞き返すと、

「は?」

と、真野さんも怪訝そうな顔をした。


「えっと、聞こえてたかって、真野さんが私を庇ってくれたことじゃなくて?」

「いや、あいつが橋本さんのことを舐め……チッ」

 真野さんは、盛大に舌打ちをして、プリンの皿をテーブルの上に乱暴に置いた。

 

「別に庇ってねえ」

「あ、もしかしてこのプリン、私が傷ついたと思って?」

「違う」

「おかしいと思いました。真野さん甘いもの食べられないですもんね」

「うるさい、黙れ」


 ーーうるさい、黙れ。


 まただ。

 さっき真野さんに名前を呼ばれたように錯覚した時と、同じ感覚に陥る。


 懐かしいような。

 何かを忘れているような。


 その感情の正体がわからなくて戸惑っていた私は、真野さんが踵を返そうとしているのに気づいて、ハッと我に返った。


「あっ、あの」

「何だよ」

「あの、庇ってくれて、ありがとうございました。プリンも、ごちそうさまです」

「だから庇ってねえ」

 絶対に認めない気だ。


「来週、合宿ですね」

 話を変えることにした。

 少しでも真野さんとの時間を引き伸ばしたくて。


「それがどうした」

「楽しみだなと思って」

「何だそら」


 私の足掻きも虚しく、真野さんは大股で歩いて行ってしまった。

 ドキドキとうるさい心臓を残して。

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