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「そうか。悪かったな、俺の指導不足だ。気にするな」
「え?何のことですか?」
意味がわからなくて聞き返すと、
「は?」
と、真野さんも怪訝そうな顔をした。
「えっと、聞こえてたかって、真野さんが私を庇ってくれたことじゃなくて?」
「いや、あいつが橋本さんのことを舐め……チッ」
真野さんは、盛大に舌打ちをして、プリンの皿をテーブルの上に乱暴に置いた。
「別に庇ってねえ」
「あ、もしかしてこのプリン、私が傷ついたと思って?」
「違う」
「おかしいと思いました。真野さん甘いもの食べられないですもんね」
「うるさい、黙れ」
ーーうるさい、黙れ。
まただ。
さっき真野さんに名前を呼ばれたように錯覚した時と、同じ感覚に陥る。
懐かしいような。
何かを忘れているような。
その感情の正体がわからなくて戸惑っていた私は、真野さんが踵を返そうとしているのに気づいて、ハッと我に返った。
「あっ、あの」
「何だよ」
「あの、庇ってくれて、ありがとうございました。プリンも、ごちそうさまです」
「だから庇ってねえ」
絶対に認めない気だ。
「来週、合宿ですね」
話を変えることにした。
少しでも真野さんとの時間を引き伸ばしたくて。
「それがどうした」
「楽しみだなと思って」
「何だそら」
私の足掻きも虚しく、真野さんは大股で歩いて行ってしまった。
ドキドキとうるさい心臓を残して。




