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真野さんたちに気づかれる前に席を立つつもりだったのに、向こうが先に食べ終えてしまったようだ。
椅子を引く音がする。
私に気づくな。
気配を消してそう願った。
学生に気まずい思いをさせたくなかった。
幸い、2人ともこちらに気づいた様子はなく、私の後ろを食器トレイを持って通り抜けて行った。
完全にいなくなったのを確信して、ホッとため息をつく。
生きた心地がしなかった。
急ぐ必要がなくなって、ゆっくりと残りのご飯を口に運んでいると、すぐ横で誰かがカラカラとショーケースを開けるのに気づいた。
プリン……。
未練が再燃して、研究室に現金を取りに戻るか悩んでいた私は、プリンが目の前に現れた時、心臓が止まるかと思った。
その持ち主を見上げて、二度びっくりした。
それが、真野さんだったからだ。
「聞こえてたか」
プリンを私に差し出しながら、真野さんがボソリと言う。
気まずそうな口調だったから、私を庇ったのが照れくさいのかと思った。
「はい。聞こえてました」
真野さんを動揺させたくて、はっきりと肯定する。
すると、真野さんはなぜか小さくため息をついた。




