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「橋本先生って、真野さんより年下ですよね」
学生は、私の話題を広げた。
「ああ。それがどうした」
真野さんがそっけなく答える。
やめて、と思った。
学生が言おうとしていることが、予想できて。
「悔しくないんスか?真野さんの方が論文もたくさん書いてるのに」
私の予想は的中した。
「何がだ」
「だって、みんな言ってますよ。真野さんが准教授になるべきだったって。
橋本先生って、教授のコネで准教授になったんじゃないスか?あの人、アメリカ行ってただけで、大したことしてないッスよね」
学生は不満げな声でそう訴えた。
胸がギュッと苦しくなる。
私が准教授になったことをよく思わない学生がいることは、知っていた。
真野さんの指導を受けている学生は特に。
でも、いざ生の声を聞くと、ショックだった。
真野さんが同調するのを聞いたりしたら、きっと私は立ち直れない。
移動しようと思って、空いている席を探していると、ガチャンと食器が鳴るのが聞こえた。
「勝手なことを言うな」
唸るような声で真野さんは言った。
「橋本先生がどれだけ努力してきたか、お前知らないだろ」
ボソボソと聞き取りにくい声だったけど、真野さんは、確実に私のことを庇ってくれた。
食堂の片隅で、もう少しで泣きそうになった。




