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愛してるって言わないで  作者: Mariko
思い出せない
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1

 教授室のドアをノックして、返事を待たずに押し開ける。

「そろそろお昼どうですか?」

 奥のデスクでパソコンに向かっている恭子さんに、そう呼びかけた。


 壁にかかっている時計は、11時半を指している。

 今のうちに行かないと、授業を終えた学部生が食堂になだれ込んできて、長蛇の列に並ぶはめになる。


「あ、ごめーん。今日お弁当なのー」

 私に気づいた恭子さんは、のろける気まんまんの顔で、弁当箱を掲げてきた。

 旦那さんが作ってくれたのだろう。

 

 恭子さんは、お弁当持参の日、絶対に食堂に付き合ってくれない。

 昔からそうだ。


「ああ、そうですか」

 捕まると面倒だと思って、ドアを閉めようとした。

 のに。


「あ、待って、亜希ちゃん」

 ちゃん呼びで引き止められた。

 無視するわけにもいかず、しぶしぶ教授室に足を踏み入れる。

 私がこのラボに戻って来れたのは、恭子さんのおかげだ。


 恭子さんは、私が学生だった時、准教授だった。

 私がアメリカの大学に留学している間に教授になって、ビザが切れて帰国するか迷っていた私を、准教授として迎えてくれた。


 私が学生だった頃から、ラボに女性が少なかったこともあって、恭子さんは私と仲良くしてくれた。

 今でも、2人の時はちゃん呼びだ。さすがに、学生の前では『橋本先生』と呼んでくるけれど。

 

「今年の学会発表だけどーー」


 恭子さんは、本当に私に用があったようだ。

 話し込んでいたら、30分くらい経っていた。

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