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愛してるって言わないで  作者: Mariko
聞こえない
7/89

6

 アオイは1分足らずで通話を終えて、笑みの残る顔をこちらに向けた。

 友達だろうか。


「約束があるんだったらそっち行きなよ」

 私のために遊ぶ約束を断ったのだとしたら、余計なお世話だ。


『橋本さん、昨日、真野さんと帰ってましたよね』

 アオイは私の言葉には答えず、そう返してきた。

 何の脈絡だ。


「あんたに何か関係ある?言っとくけど、毒とか盛られて耳がおかしくなったわけじゃないから」

 動揺を隠してそう言い返したら、何がツボに入ったのか、アオイは口を押さえて笑った。

 意外と、こいつが本気で笑ってるのを見るのは初めてかもしれない。


『橋本さん、すごい酔っ払ってたから、毒盛られても気づかなかったんじゃないですか?』

「冗談言わないで。安静にしてなきゃいけないんだから」

『添い寝してあげましょうか?』

「だから、ふざけてる場合じゃないんだってば」


 やっぱり馬鹿だ。

 事態の深刻さが全然わかってない。

 まあ、仕方ないか。他人事だしな。


 アオイはまだ何か喋っているようだったけど、構わず大股で歩き出した。

 追いかけてくる気配がなくて、ホッとしたのも束の間、突然、後ろから抱きつかれた。


「ちょっと、いい加減にしてよ」

 アオイのバックハグから抜け出そうとするけど、解放してくれない。

 目の前にアオイのスマホを突きつけられて、仕方なくそれを読んだ。


『僕、橋本さんのことずっと好きでした』


 悪ふざけだと思った。

 こいつは私に付きまとってくるけど、男女の関係を匂わせてくることは一切なかった。

 潔癖なくらいに。


「こんな時に何?怒るよ」


 言うほど腹は立てていなかった。

 私にとってアオイは、空気のような存在だった。

 実際に、こんなに密着していても、何も感じない。

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