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愛してるって言わないで  作者: Mariko
一緒にいられない
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6

『明日が楽しみになりました』


 メスを自分の首に当てようとした時、亜希の弾む声が蘇った。


『真野さんの研究報告を聞いたら、次はどんな実験をするんだろうって、ワクワクして。

好きな芸人が解散して落ち込んでる友達の気持ちが、何となく分かった気がします』

 

 彼女は知らない。

 その言葉が、どれだけ俺の心を救ったか。


 自分の研究報告を楽しみにしてくれている子がいるーー。

 その事実が、どれだけ俺の毎日を変えたか。


 あの頃の俺は、研究が行き詰まっていて、死ぬことばかり考えていた。

 人に呪いをかけてしまうことに怯えながら生きることに、嫌気がさしていたのだ。


 亜希は、そんな俺に生きる理由をくれた。

 たとえそれが、彼女自身の言葉じゃなくて、幻だったのだとしても。


「おい」

 メスから手を離して、アオイの胸ぐらを掴む。

「今、俺がお前にキスをしたらどうなる?」


 死んだら、もう二度とやり直すことができない。

 他に彼女を守る方法があるのなら、それを試してからでも遅くない。


「だ、ダメだ」

 俺の問いに、アオイは明らかな動揺を見せた。

「今はダメだよ。向こうに戻ってからじゃなきゃ」

 俺に対する欲情と恐怖の狭間で、葛藤している。


「どうなるのかって聞いてるんだ」

「ね、一緒に行こう。その後ならーー」

 問いには答えずに、再び俺の胸に手を当ててくる。


 胸がじんわりと熱くなって、力が抜けていく。

 俺を自分の世界へ連れていくつもりだろう。


 力を振り絞って、アオイを引き寄せて、唇を押し付けた。

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