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愛してるって言わないで  作者: Mariko
一緒にいられない
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5

「本当に言うんだ」

 わずかな沈黙の後で、アオイが笑って言う。

 その声の調子がいつもと変わらなくて、一瞬からかわれたのかと思った。


 でも。


「はあ、すっごい。ゾクゾクするな。戸塚に言われてるみたいで」

 アオイは、俺の胸に手を沿わせて、恍惚の表情で見つめてきた。

「君は、戸塚の若い頃にそっくりだ」

 うっとりと、そう呟く。

 

 こいつは、爺さんに惚れていたのだろうか。

 それで爺さんから女を奪っていたのだろうか。


 もしかすると、爺さんに呪いの力を与えたのは、爺さんとこうなりたかったからだったのかもしれない。


「さあ、僕と一緒に行こう」


 アオイに触れられている部分が熱を帯びだすのを感じて、俺は我に返った。


 過去のことなど、どうでもいい。

 俺の復讐はまだ終わっていない。


 アオイを突き飛ばして、尻ポケットに手を突っ込む。

 すぐに金属質のひんやりとしたものが指に触れた。


 これは、大型の実験動物を解剖する時に使うメスだ。

 これで全てを終わらせる。


 刺す相手は、アオイではなく、自分だ。

 アオイを刺しても、殺せる保証はない。

 俺なら、頸動脈を正確に切り裂ければ、確実に死ぬことができる。


 母さんは、父さんを刺し殺した後、父さんに跨って、父さんの名前を叫びながら自殺した。

 父さんが死んだ後も、呪いが解けなかったのだ。


 それなら、俺が死んだ後も、アオイの呪いは解けないに違いない。

 こいつが、亜希に手を出すこともない。


「愛してるよ、アオイ」


 呪いをできるだけ強くかけたくて、俺は愛の言葉を繰り返す。

 死ぬ前に。


 死ぬのは怖くない。

 亜希と一緒にいられない世界に、未練はない。

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