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翌朝、一度自分の家に戻って、車で亜希を迎えに行った。
『海が見たい』
亜希がそう言ったから、俺は彼女を乗せて浜へと車を走らせる。
車の中で亜希は、いつになくテンションが高くて、無言を貫く俺に向かって喋り続けている。
「ーーそれでその子、好きな芸人が解散した時、すっかり落ち込んじゃって。同級生のLINEグループでみんなでひたすら励ましてました」
そんな、他愛もない話を。
ラボは、2人揃って休んだ。
どうせ世界が終わるのだ。周りの目を気にしたって仕方がない。
俺たちが交わったことは、なかったことになる。
愛し合ったことも。
浜辺の駐車場に車を止めると、亜希は晴れた空の下、海を抱きしめるように駆け出した。
潮風に髪をなびかせながら、石段の上に腰を下ろす。
もっと海に近づけばいいのにと思ったけど、亜希の隣に腰を下ろすと、目下に砂浜と海が広がっていて、悪くない眺めだった。
「海を見てたら、悩み事がちっぽけに思えるっていうけど、」
亜希は、しばらく黙って海を見つめた後、ポツリと言った。
「この悩みは、全然、小さくならないみたい」
泣き出しそうな気配を感じて、その柔らかな唇にキスをした。
その身体を、深く抱きしめた。
俺には、この世界がくだらなく思える。
呪いに振り回されて、いとも簡単に作り変えられてしまう世界などは。




