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愛してるって言わないで  作者: Mariko
聞こえない
6/89

5

 耳鼻科を出ると、知ってる顔にぶつかって、『げ』と思った。

 ひとりで今後のことを考えたかった。

 それまでは、誰にもこのことを知られたくなかった。


「〜〜〜」

 話しかけてくるけど、さっき電話で話した時と同じように、さっぱり聞き取れない。


 というか、こいつは私を待ち伏せしていたのだろうか。どうして私が耳鼻科にいることが分かったのだろう。

 あの電話で私の耳の聞こえを疑ったのだとしたら、そこまで馬鹿ではないのかもしれない。


 アオイは、犬みたいな奴だ。

 去年うちのラボに入ってきて、なぜか私に懐いた。

 基本的には鬱陶しいのだけど、何でも雑用を引き受けてくれるから、私もつい、いろいろと頼んでしまう。


 私がひと言も喋っていないにも拘らず、アオイは喋り続けている。

 この場を適当に切り抜けるのは難しそうだ。

 そう思って、仕方なく、さっきスマホに入れた文字起こしアプリを立ち上げた。


「ねえ」


 アオイに、スマホの画面を突きつけた。


「何でか分かんないけど、私いま、人の話が聞き取れないの。私に用があるなら、これに向かって喋って」


 そう言ったら、アオイは一瞬虚をつかれたように目を見開いたあと、ニヤリと笑って何かを呟いた。


 スマホの画面を見ると、

『強かですよね、橋本さんって』

と入力されていた。


 馬鹿にしてるのかと思って怒ろうとしたけど、アオイは私のスマホを持つ手をグイッと引き寄せて、また何やら喋った。


『それじゃ不便でしょ。買い物とか付き合いますよ。ちょっと待っててください』


「いや、別にいいーー」


 私が画面から目を上げて断ろうとした時には、アオイは既にこちらに背を向けていて、スマホを耳に当てたところだった。


 アオイが私から2、3歩遠ざかったから、文字起こしアプリが反応しない。

 近づいていって盗み聞きするのも憚られて、かといって勝手に帰ることもできなくて、その通話が終わるのを待った。

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