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返す言葉に詰まった。
確かに、俺がアオイに敵うはずがない。
呪いの力を使う以外には。
アオイは、見た目も、コミュニケーション能力も、俺よりずっと優れている。
「それなら、お互いに忘れた方がよっぽどマシです」
亜希が、言い聞かせるように俺の手を取った。
「真野さんだけでも、呪いから解放される方が、ずっといいです」
「嫌だ」
今度は俺がそう言う番だった。
「アオイになんか、絶対に渡さない。アオイに取られるくらいならーー」
俺は死んだ方がマシだ。
その言葉を、飲み込んだ。
「このままでいよう」
数回の呼吸の後で、俺は絞り出すようにそう言った。
「分かりました」
亜希はそう答えた。
「いいのか。男の言葉が一生聞き取れなくても」
あまりにも即答だったから、自分で言ったくせに、俺はそう確認する。
俺の声を聞かなければ、興奮状態になることは避けられるとしても、その耳で生きていくのはあまりに不便だ。
「はい。真野さんの声が聞こえれば、構いません」
彼女は再びそう即答する。
これもアオイに操られているのだろうか。
束の間、胸に浮かんだそんな疑念をかき消して、亜希と一緒にベッドの上に倒れ込んだ。
「好きって言わないで」
覆い被さるようにして首筋に吸い付く俺に、亜希が言う。
「ちゃんと真野さんのことを愛していたいから、好きって、愛してるって言わないで」
俺は頷く。
何度も頷く。
愛してる。
愛してる。愛してる。
口に出せない分、胸の中を埋め尽くす。
気を抜けば声に出そうになる。




