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「あはは、迷ってるね」
俺の目を覗き込んで、アオイがせせら笑ってくる。
「人間って本当に滑稽だよな。自分のことだけ考えてりゃ単純なのに、うだうだと余計なことばかり考えてさ」
「うるさい」
アオイを突き飛ばした。
俺は今、何ということを考えたのだ。
「言っとくけど、僕がキスできないように自分の唇を取り除こうとか、声を潰そうとかしたって無駄だからね。
そこには魔力が宿ってて、人間には手出しできない」
アオイが、俺の思考を見透かしたように先回りして言う。
そして、亜希に目を向けた。
「橋本さんはどうーー。あはは、そろそろヤバそうだね」
見ると、目がとろんとして、興奮状態が近いことは明らかだった。
さっさと亜希だけでも外に出しておけば良かった。
自分の愚かさに、嫌気がさす。
彼女の手を掴んで、急いで部屋を出ようとした。
これ以上ここで声を出すわけにはいかない。こうなった時の亜希は、俺の声に反応してますます興奮が高まっていくから。
「家まで持つの?ここでしたらいいのに」
煽ってくるアオイを無視して、ドアを開ける。
「まあ、2人でゆっくり考えたら。といっても、僕もそろそろ向こうに戻らなきゃいけないから、あんまり時間残ってないけど」
ドアを閉める間際に、アオイはそんな大事なことを、ポロッと言った。




