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愛してるって言わないで  作者: Mariko
決められない
54/89

9

「お前ーー!」

 俺に胸ぐらを掴まれても、アオイは動じない。


「僕が憎い?いいよ、キスしても。そしたら、君は僕と縁が切れるし、僕は橋本さんを取り返せる。まだ壊れてないから、しばらく楽しめそうだ」

 ふざけるな。

 どこまで亜希を弄ぶ気だ。


「……爺さんのことは、水に流す」

 俺は絞り出すようにアオイに言った。

「だけど、橋本さんはもう、勘弁してやってくれよ」

 それは、懇願だった。


「お前も知ってるんだろ。爺さんがかけた呪いのせいで、橋本さんはもう十分苦しんだんだ。それなのに、俺がまた巻き込んだ。これ以上、不幸な目に遭わせないでくれ」

 今ならまだ取り返しがつく。

 亜希は、全部忘れて、幸せに暮らせる。

 

「どうかな」

 俺に胸ぐらを掴まれながら、アオイは飄々としている。

「僕が介入しなかったら、橋本さんは今もまだ元カレと別れてないよ。きっと不幸な結婚生活を送ることになったはずだ」


「そんなの、分からないだろ」

「分かるさ。橋本さんはそういう運命の人間なんだよ。君が気に病む必要はない」

 アオイが俺に顔を寄せてくる。

「さあ、どうする?僕にキスをして、橋本さんを返してくれる?」


 こいつに渡すくらいなら、呪いを抱えたままの方がマシだ。

 でも、このままでいいはずがない。


 俺はいつか亜希を壊してしまう。

 それに、いつアオイの気が変わるか分からない。


 いっそ、亜希を壊してしまおうか。

 そうすれば、アオイに奪われなくて済むだろうかーー。

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