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愛してるって言わないで  作者: Mariko
決められない
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8

「好きになるように誘導したって、どういうこと?」

 指をよっつ折った状態のアオイに、亜希が問いかける。

「私は、自分で真野さんを好きになったの。行動を操ったか知らないけど、この気持ちは私だけのものだから」


「へえ。真野さんのこと、愛してるんだね」

 アオイが亜希の方を見て、からかうように笑う。


「橋本さんがセクハラされて理不尽な目に遭うように演出したのは、僕さ」

 指を折るのをやめて、アオイは得意げに言った。

「真野さんは、そんな君を見るに見かねて庇った。あれがなかったら君は、真野さんのことを何とも思ってなかったと思うよ」


 谷川もこいつに操られていたのだーー。

 アオイの持つ力の大きさを思い知らされて、俺は重大なことに気づいた。


「橋本さんが俺に好きだと言ったのも、お前が操ったのか」

 俺に繰り返し好きだと言ってくれた亜希の声が、虚構の海に沈んでいく。


「そうだよ」

 アオイの肯定で、決定的になる。

「そこまでしたら面白くないって思ってたんけど、君があまりにもしぶといから、奥の手を使わせてもらった」


「そんなの嘘」

 亜希が取り乱す。

「だって、真野さんに告白した時のこと、私ちゃんと覚えてるし」


「僕に操られたからって、必ず記憶を失うわけじゃないよ。橋本さんを抱いた時の記憶は消させてもらったけど」


 そんな2人のやりとりが、耳を通り抜けていく。

 やっぱり、俺を好きになってくれた彼女は、幻だったか。


「あはは、そんな傷ついた顔しないでよ」

 アオイは、俺を見て言った。

「僕も鬼じゃない。君が僕の正体に気づくチャンスだって与えてた。戸塚の時と同じ名前で君に近づいたのに、君が気づかないから」


 敷間ーー。

 爺さんが死に際に口にした名前。

 俺はそれを色魔だと誤解した。


「お前、爺さんにも何かしたのか」

 爺さんの容体が急変したのは、突然だった。

 まさか、こいつが。


「向こうが僕を見て、勝手にびっくりしただけだよ」

 アオイがヘラヘラと弁明する。

「僕だってびっくりしたさ。戸塚があんなシワシワの爺さんになってて」

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