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「君は気づいてないだろうけどさ」
アオイが片頬を歪めながら言う。
「君に力を使わせるために、僕がお膳立てしてあげたんだよ」
「お膳立てだと?」
俺がそう聞き返したのとほぼ同時に、横で亜希がスマホから顔を上げた。
「他にも、何かしたの?」
怯えたような声だった。
「私をこのラボに誘導する以外にも、何かしたの?」
彼女の問いに、アオイが不気味な笑みを浮かべる。
「本当は、なるべく介入したくなかったんだけどね」
そう、言い訳がましく前置きした後で。
「真野さんがなかなか力を使わないから、ちょっとだけ行動をいじらせてもらったよ」
そんな恐ろしいことを、さらりと打ち明けた。
「じゃあ、」
亜希が少しトーンを落として問う。
「真野さんが私に好きって言ったのも、アオイが操ったからだったの?」
まるで、そう信じたがっているようだった。
呪いがかかるのを分かっていて、好きだと言うーーそんな酷いことを、俺がするはずがないと。
底知れない自己嫌悪に、亜希の顔が見れない。
「いやいや」
アオイが亜希の期待を打ち砕く。
「そこまで介入したら意味ないじゃん。それに、」
俺を指さして言う。
「真野さんがその力を持ってる限り、僕は真野さんの行動を操ることができないんだ」
それを聞いて、じわりと安堵の念が胸の中に広がった。
俺はアオイに操られていない。
つまり、俺の過去は、全て俺のものだ。
亜希を愛するこの気持ちも、ぜんぶ俺のものだ。
たとえ、彼女が幻だったとしても。




