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愛してるって言わないで  作者: Mariko
決められない
50/89

5

「だったら何だよ」

 追い詰められている亜希を助けたくて、俺は口を開いた。

「なぜ、橋本さんをこのラボに誘導した」


 当時、亜希に彼氏がいることは知っていた。

 亜希がそのまま別のラボを選んでいたら、俺は多分、亜希を好きにならずに済んだ。

 呪いをかけずに済んだのに。


「人間に奪われるのがどんな気分か、知りたかったからだよ」

「は?」

 アオイの答えは、意味不明だった。


「本当はさ、人間界に戻ってきた時、その力を取り戻すつもりだったんだよ。いつまでも人間に持たせてるのも良くないからね」

 アオイは、ドア近くのキャスター付きの丸椅子に腰掛けて、俺たちを見上げて言った。


「だけど、気が変わった。戸塚も孫の君も、せっかくあげた力を使ってないし、全然幸せそうじゃないんだもん。戸塚なんて、しょぼくれた顔で知らない婆さんに金渡してるしさ」

 口を尖らせて、椅子を揺らしながら続ける。

 

「それで、何があったんだろうと思って、その婆さんからいろいろ聞き出した。僕のいない間に、ずいぶん面白いことになってたんだね」

 思い出し笑いを漏らしたアオイは、そこで亜希のことをじっとりと見つめた。


「その時だよ。橋本さんに初めて会ったのは。俺が婆さんをいじめてると思ったのか、突っかかってきた。ゾクゾクしてさ、思わず手を出しちゃった。こんなに人間に惹かれたのは、久しぶりだったよ」

 俺の隣で亜希が、スマホに目を落としたまま、「おばあちゃんのことだったの」と呟く。

 怯えたような声で。


「でね」

 亜希の様子をよそに、アオイは楽しそうに続ける。

「思いついたんだ。今度は人間に奪われてみようって。かつて僕は、戸越から女を奪うばかりだったからさ。君に力のありがたさを実感させることもできるし、一石二鳥だろ」


 理屈はさっぱり理解できない。

 ただ、俺が力を使っていなかったのが気に食わなかったのだ、ということだけは分かった。


「それで、俺たちを引き合わせるために、橋本さんをこのラボに誘導したのか」

 俺がそう確認したら、

「そう。その通りだよ」

と、アオイは嬉しそうに肯定した。

「だったら、」

 話が通じる相手ではないけど、説得を試みる。


「もう目的は達成しただろ。俺は力を使って、お前は俺に橋本さんを奪われた。力を返すから、おとなしく自分の居場所に戻れよ」


 二度と、アオイが橋本さんに手を出さないように。

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