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「君がその力で橋本さんを捉えている限り、僕は橋本さんに手出しができないんだ」
俺に胸ぐらを掴まれながら、アオイはニヤニヤと言う。
「でも、君が力を手放せば、僕は橋本さんと前みたいに遊べるようになる。そうだな、戸塚の女の時みたいに、あっちに連れて帰ってもいいな」
全身総毛立って、手から力が抜けた。
自由になったアオイが、再び亜希の方に手を伸ばして、頬に触れている。
「僕はもちろんウェルカムだけど、真野さんはそれでもいいの?それでもその力を手放したい?」
俺は何も言い返せない。
呪いが消えれば、自ずと亜希を解放できるものだと思っていた。
こいつに囚われてしまうのなら、意味がない。
「大丈夫です」
俺の代わりに答えたのは、亜希だった。
「私は、アオイなんかには靡かない。だから、大丈夫です。真野さん、呪いを消して」
「どうかな」
アオイが、からかうような目を亜希に向ける。
「橋本さんは、男のことになると、信じられないくらい馬鹿になるからな」
アオイの指が、亜希の首筋をなぞっていく。
「ねえ、思い出したんでしょ?君は何度も何度も僕を求めてさ。君のそういうところが、最高に人間らしくてそそられるんだよな」
「やめろ」
聞きたくなくて、遮った。
「どうせお前が妙な力を使ったんだろ」
言ってから、そうであってくれと願った。
「まあ、そうだね」
アオイは、あっさりと認めた。
「でも、橋本さんが男のことになると馬鹿になるのは本当だよ。ラボだって、当時付き合ってた彼氏のところに入ろうとしてたくらいだから」
「嘘」
亜希が首を横に振る。
「そんなはずない。聴覚の研究がしたくてこの大学に来たのに、他のラボに入ろうなんて考えるわけない」
「あはは。それは真野さんとチューしても思い出さなかったんだ。嘘じゃないよ。僕が、君に暗示をかけて、このラボに誘導したんだ」
怯えた表情で首を横に振り続けている亜希を見て、アオイがせせら笑う。
「君はね、彼氏に言われたら、それまでの決意とか想いとか全部忘れて、ほいほい付いてっちゃうような人なんだよ。
ほんと、君って、強いんだか弱いんだか分からないよね」




