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愛してるって言わないで  作者: Mariko
決められない
48/89

3

「あはは。これだよこれ。こういうのが見たかったの」

 アオイが満足そうに言う。

「橋本さん、君はどうしたい?真野さんからの愛から解放されて、全部忘れてしまいたい?」

 愚問だ。

 そんなの、答えは一つしかない。


「解放されたいに決まってーー」

「私はーー」

 亜希は、ためらうように口を開いた。

「真野さんの呪いが解けないんだったら、私は、今のままでいい」

「何をーー」

 俺に口を挟む隙を与えずに、亜希は続ける。

「私、真野さんと離れたくない。何も忘れたくない」


 そんなはずがない。

 今のままでいいわけがないだろ。


「アオイ、お前……!」

 頭がいい彼女がこんなことを言うなんて、どう考えてもおかしい。

 アオイに操られているのだ。


「いやいや、僕は何もしてないよ」

 でも、アオイは俺の疑いを否定した。

「僕は今、人間観察を楽しんでるところなんだ。ここで介入したら、意味がないだろ」

 だったら、何でーー。


「ねえ、知りたい?」

 アオイは機嫌を直したように、ニヤニヤした顔を亜希に向けた。

「真野さんがその力を手放す方法」

 亜希が、スマホから目を上げて大きく頷く。


 アオイは、そんな亜希の唇に触れた。

「僕たちの世界ではね、唇や、口から発される言葉に、魔力が宿ってるんだ。つまりね、真野さんが僕にキスをすれば、その力は僕の元に戻ってくるーー」

 話し終わる前に、俺はアオイの胸ぐらを掴んでいた。


「待ってよ。いいの?最後まで聞かなくて」

 キスしようとした俺を、アオイが制する。

「これ以上、聞くことはない。呪いが解けるんだろ」

「そうだよ。君は普通の人間に戻る。それって、どういうことか分かる?」

 いちいち、もったいつけやがって。


「俺も全部忘れるんだろ。いいよ、どうせ最初から間違ってたんだ」

 精一杯の強がりでそう答えた俺に、

「それだけじゃないよ」

と、アオイは笑みを大きくした。

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