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亜希は、アオイの話をすんなり信じた。
アオイの言葉が文字化された画面を見つめて、「そういうことだったの」と、静かに呟いた。
そして、スマホから目をあげて、アオイのことを睨みつけた。
「今すぐ、この呪いを解いて!」
彼女の掴みかからんばかりの剣幕に、アオイは不服そうに口を尖らせる。
「君も、これを呪いと呼ぶのか」
「すまなかった」
亜希のその様子を見て、耐え難い罪悪感が胸を塞ぐ。
「橋本さんには、呪いがかからないと思ってたんだ。血縁者には効かないから。俺、橋本さんが爺さんの娘だと信じ込んでて……」
「何だよ、それ」
アオイが声をあげて笑う。
「やっと力を使ったかと思えば、そんな理由だったの?やっぱり人間は分からないなぁ」
こいつには理解できなくていい。
ただ、この呪いを消してさえくれれば。
「聞いただろ。橋本さんも呪いから解放されたがっている。早く解き方を教えろよ」
急がないと、もう少ししたら亜希はまた興奮状態になってしまう。
アオイがなかなか捕まらなかったせいで。
「えー、そんな忌まわしいものみたいに思われたまま、その力を取り返すのは癪だなぁ」
「はあ?」
「うん、取り返すのは、君がありがたみに気づいてからにしよう」
気まぐれにそう呟いて、アオイは実験室を出て行こうとした。
「ふざけんな」
俺は握り拳を固める。
「話が違うだろ。早く教えろよ。どうしたらこの呪いは消えるんだ」
「やけに急かすね」
アオイがドアの前で振り向いて、意味ありげに笑う。
「もしかして、橋本さんの発情が近いのかな。いいよ、僕の前でしても」
この下衆が。
「黙れ」
とても話が通じそうにない。




