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「えー、要らないの?つまんないな」
アオイが口を尖らせて言う。
やっぱりこいつは、俺たちが苦しむのを見て、面白がっていただけだ。
「んー、取り除く方法はあるけど、本当にいいの?忘れちゃうよ?」
アオイが念押ししてくる。
「橋本さんが俺のことを忘れる、という意味か。それなら覚悟はできている」
いずれにせよ、俺は亜希を呪いから解放するつもりだった。
解放されれば、亜希は俺とのことを忘れる。
「君もだよ」
アオイは、俺を指さして言った。
「君も、その力に関わることを全部、忘れるよ。それだけじゃない。辻褄が合うように世界が作り変えられる。その世界で、君が橋本さんに再び出会える保証もないよ。それでもいいの?」
俺が呪いの力を手放すということは、それだけ影響の大きいことなのか。
そう思って、少し怯む。
「橋本さんがこの世界から消える可能性もあるのか?」
もしもそうなら、元も子もない。
そう思って尋ねたら、アオイは笑って手を振った。
「それはない。今あるものを元に辻褄合わせが行われるだけだ。何かが増えたり減ったりすることはないよ」
それを聞いて、俺は肩で息をついた。
「それなら、何の問題もない」
呪いの存在しない、正常な世界に作り変わるだけだ。
俺と亜希が交わったこの世界こそが、異常なのだから。
「俺から呪いの力を取り除いてくれ。俺には橋本さんを不幸にすることしかできない」
何回泣かせただろう。
あの子は何も悪くないのに。




