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確かに、今朝キスをした時、亜希は動揺していた。
俺のキスが嫌だったのかと思ったけど。
不意にアオイの言葉が蘇る。
『もう、チューはしましたか?』
よく考えたら、単なる下世話なノリにしては変だ。
普通、キスのことなど訊かない。
たとえ、俺が堅物だと思われていたとしても。
そこで、ハッとした。
「アオイって……」
まさか。
そんなことって。
「アオイって、下の名前だよな。名字は何だ?」
俺ももちろん知っているけど、確信が持てなくて、亜希に尋ねる。
自分がこんなことに気づかなかったのが、信じられなくて。
「敷間。敷間蒼です。それが……?」
亜希があっさりと答えを口にする。
敷間。
爺さんがうわ言のように口にしていた言葉はーー。
『色魔。色魔が現れたーー』
色魔じゃなくて、敷間だったのだとしたら。
「悪い。ラボに戻る」
「え?」
もしも。
もしもアオイが、爺さんに呪いの力を与えた奴なのだとしたら。
呪いの力を取り除くこともできるはずだ。
呪いの力が消えたら、その時はーー。
「俺は橋本さんの話を信じる。大丈夫だから、待っててくれ」
その時は、愛していると伝えよう。




