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愛してるって言わないで  作者: Mariko
抗えない
38/89

2

「どうしたんスかね」

 アオイが俺のそばにやって来て、亜希の後ろ姿を見送りながら首を傾げる。

 かと思えば。

「……ああ、そういうことか」

 何やら勝手に納得したようだ。


 もう、声を発しても大丈夫だろうか。

「何がだよ」

「いや、こっちの話ッス」

 しらばっくれるつもりらしい。

 問い詰めたいけど、あんまり追及しても不自然だ。

 亜希と同棲状態だということは、周りに隠している。


「それにしても、頑張ってますね、橋本さん」

 アオイは、世間話でも始めるみたいな軽い口調で、しれっと話題を変えた。

 男の声が聞き取れないのに、研究生活を維持していて偉い、という意味だろうけど、調子を合わせる気になれなかった。

 

 無視して研究室の中に戻ろうとした俺は、アオイの続く言葉に立ち止まった。

「それとも、頑張ってるのは真野さんの方ですか?」

 振り向くと、アオイは意味ありげな笑みを浮かべていた。


「どういう意味だ」

「だって、お二人、付き合ってますよね?」

 いきなり図星を突かれて、ぎくりとする。

 誰にも言っていないはずだ。


「惜しいな。久しぶりに人を好きになったのに」

 アオイはそう呟いて、俺が動揺しているのを見ると、にっこりと笑った。

「もう、チューはしましたか?」

 何だよ、それ。

 いわゆる、男同士の下世話なノリってやつか。

 このくらい大したことじゃない、落ち着け。そう、自分に言い聞かせる。

 のに。

 

「橋本さんのおへその横にあるホクロ、あれ、エロいですよね」

 アオイがそんなことを言ったから、聞き捨てるわけにはいかなかった。

「お前……!」

 廊下の壁にアオイを押し付けて、睨みつける。


「ああ、あはは。安心してください。お二人が付き合い始める前の話なんで」

 アオイは、相変わらず不気味な笑みを浮かべている。

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