8
翌朝、目を覚ますと、亜希はまだ眠っていた。
その頬に涙の跡がついているのに気づく。
俺が眠っている間にまた泣いたのだろうかと思ったら、胸が締め付けられた。
その髪を撫でると、亜希は薄く目を開けて、ふわりと微笑んだ。
可愛い。
好きだ。
抱きたい。
抱きたい。
抱きたい。
抱きたい。
衝動に突き動かされて、その唇に口付けた。
「えっ」
亜希が驚きの声をあげたから、気まずくなって後ずさった。
キスをするのは初めてだった。
亜希を傷つけそうで、何となく怖かったのだ。
「え……」
亜希はまだ動揺している。
すっかり目を覚ましたようだ。
あわよくば行為に持ち込もうとしていた俺は、すとんと冷静になった。
急いで身支度を整えて、逃げるように部屋を後にした。
朝は、声を出さないようにしている。
亜希を興奮させてしまわないように。
俺はいつでも抱けるのだけど、朝から亜希に負担をかけたくない。
それなのに、もう少しで理性を失うところだった。
これでは身体目的だと疑われても仕方がない。
しばらく声を出さずに過ごしたら、好きだと分かってもらえるだろうか。
ラボに行く道すがら、そんなことを考えていた。




