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「真野さんは、お爺さまの研究を継いだんですね」
寝たのかと思ったら、亜希は再び口を開いた。
「戸越さんのことは恨んでるけど、研究者としては尊敬しています。どうして戸越さんは、聴覚の研究をしようと思ったんだろう……」
亜希の呟きを、俺は聞かなかった振りをした。
爺さんと俺が、聴覚障害について研究しようと思った理由は、一つしかない。
そのメカニズムを解明できれば、呪いが解けるかもしれないと思ったからだ。
でも、そのことを話すわけにはいかない。
亜希はやっと静かになった。
彼女の体温を感じながら、ホッと息をつく。
そろそろ、本当に限界だ。
気を抜けば、好きだと言いそうになる。
この呪いについて、打ち明けたくなる。
でも、ダメなのだ。
爺さんに呪いをかけた奴が言ったそうだ。
『他の人間にこの力のことを話したら、その人間をこの世界から抹消する』
さすがの爺さんも、そのことについては検証しなかったから、本当に抹消されるのかは定かではない。
でも、あり得ない話ではない。
この呪い自体、現実離れした話なのだから。
だから、俺は口が裂けても、亜希に呪いについて話すわけにはいかない。
好きだと言えない理由を、説明することすら許されないのだ。




