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愛してるって言わないで  作者: Mariko
聞きたくない
33/89

5

「知らなかったんです」

 俺の胸の中で、亜希は震える声で言った。

「戸塚さんの名前も、祖母が戸塚さんから慰謝料をもらっていたことも、自分が入った大学の理事長だってことも」


 慰謝料ーー。

 そうか、それで爺さんから慰謝料をもらっていたのか。

 これは、亜希が頑なに言わなかった真相だ。


「私がこの大学に入って真野さんのいるラボに入ったのは、戸越さんの遺産目当てじゃありません。私はただ、母のような人を救うために、聴覚の研究がしたくてーー」


 これ以上、聞きたくない。

 最後まで聞いたら、ここにいる理由がなくなる。

 本当のことを話せば解放すると、俺は約束した。


 そんな浅ましいことを考えながらも、亜希が話すのを止めることはできない。

 

「去年、祖母が亡くなって、遺品を整理していたら、私宛の手紙が出て来ました。それを読んで初めて戸塚さんのことを知りました。

ショックだったけど、母に何があったのか知りたくて、戸塚さんの入院先を訪ねたんです」


 俺が亜希を目撃したのはその時だったのだろう。

 思えば、亜希はあの時、思い詰めた表情をしていた。


「戸越さんは何も教えてくれませんでした。ただ、謝るだけで。母は私のことを愛してたのだと、そう繰り返すだけで。

私の知ってる理事長時代の堂々とした戸塚さんとは全然違って、見るからに弱ってて。それ以上は聞けませんでした」


 そこまで喋って、亜希は深く息をついた。


「これが、私が知ってる全部です」

 俺の胸にそっと手を当てて、見上げてくる。

「やっと、真野さんに言えた」

 やっぱり、俺が言ったことを覚えていて打ち明けたのだ。

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