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愛してるって言わないで  作者: Mariko
聞きたくない
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1

「大好き」

 後処理をしてベッドに潜り込むと、亜希が抱きついてきた。

 こんなことをされたら、ますます離れられなくなる。


「俺はろくな死に方をしないと思う」

 心を無にしたくて、そんなことを呟いた。

「どうしてですか?」

 聞き返されて、そっと苦笑いを漏らす。

 無になるどころか、心が悦んでいる。

 俺を心配してくれる亜希の声に。


「爺さんも父さんも、ろくな死に方じゃなかった」

 亜希の柔らかな髪を撫でながら、言った。

「俺も同じ道をたどるのだろう」


 特に父さんは悲惨だった。

 俺の母さんに刺されて死んだ。


 爺さんと違って父さんは、生涯でただひとり、母さんにしか呪いをかけなかった。

 母さんを避けているように見えて、子供の頃はそれが不思議だった。


 爺さんに言われて、その理由が分かった。

 俺たちが口にする愛の言葉は、ある種の麻薬のようなもので、与えれば与えるほど、依存が強まっていく。

 そしてある日、限界量を超えて、女は壊れる。そうなったら、呪いを解いても元に戻らない。

 そう、爺さんは言った。

 爺さんは、何度か経験済みだった。

 

 父さんが気を付けていたにもかかわらず、母さんはいつからかおかしくなった。

 父さんの声を聞かなくても、正常状態を保てなくなった。

 そして、ついには父さんを包丁で刺してしまった。

 その後すぐ、自らも、父さんの名前を叫びながら命を絶った。

 すべては、俺の目の前で起こったことだ。


 もしも今、俺が死んだら、亜希はーー。

 一生、男の言葉が聞き取れないまま生きていくことになるかもしれない。


 だから、早く亜希を解放しなければ。

 明日、俺が事故で死ぬ可能性もあるのだから。

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