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「大好き」
後処理をしてベッドに潜り込むと、亜希が抱きついてきた。
こんなことをされたら、ますます離れられなくなる。
「俺はろくな死に方をしないと思う」
心を無にしたくて、そんなことを呟いた。
「どうしてですか?」
聞き返されて、そっと苦笑いを漏らす。
無になるどころか、心が悦んでいる。
俺を心配してくれる亜希の声に。
「爺さんも父さんも、ろくな死に方じゃなかった」
亜希の柔らかな髪を撫でながら、言った。
「俺も同じ道をたどるのだろう」
特に父さんは悲惨だった。
俺の母さんに刺されて死んだ。
爺さんと違って父さんは、生涯でただひとり、母さんにしか呪いをかけなかった。
母さんを避けているように見えて、子供の頃はそれが不思議だった。
爺さんに言われて、その理由が分かった。
俺たちが口にする愛の言葉は、ある種の麻薬のようなもので、与えれば与えるほど、依存が強まっていく。
そしてある日、限界量を超えて、女は壊れる。そうなったら、呪いを解いても元に戻らない。
そう、爺さんは言った。
爺さんは、何度か経験済みだった。
父さんが気を付けていたにもかかわらず、母さんはいつからかおかしくなった。
父さんの声を聞かなくても、正常状態を保てなくなった。
そして、ついには父さんを包丁で刺してしまった。
その後すぐ、自らも、父さんの名前を叫びながら命を絶った。
すべては、俺の目の前で起こったことだ。
もしも今、俺が死んだら、亜希はーー。
一生、男の言葉が聞き取れないまま生きていくことになるかもしれない。
だから、早く亜希を解放しなければ。
明日、俺が事故で死ぬ可能性もあるのだから。




