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愛してるって言わないで  作者: Mariko
言わない
21/89

1

 やっと終わった。

 深い安堵に、真野さんの体温も相まって、意識を吸い取られそうになる。

 それを、舌を噛んで踏みとどまった。

 ここで寝たら、真野さんが消えてしまいそうな気がして。


 真野さんは、さっきよりも少しだけ長く余韻を取った後、むくりと起き上がった。

 私と目が合って、露骨に嫌そうな顔をする。


「寝てろよ」

 ベッドから降りて、自分のパンツを拾っている。

「嫌です」

 私もベッドの上に身を起こして、自分が脱ぎ散らかした服を集める。

「嫌ですって何だよ」

「真野さんと、ちゃんと話したい」

「俺はもう話すことなんかない」

 真野さんはもうシャツを羽織っていて、手早くボタンを留めていっている。


「嫌がらせするだけのつもりだったって、何ですか?」

 最中の発言を持ち出すと、真野さんは小さく舌打ちをした。

「聞こえてたのかよ」

「解放してしてやるって、どういう意味ですか?最後にするって」

「うるさい」

「私、真野さんに何をしてしまったんですか?傷つけたのなら、ちゃんと謝らせてーー」

「もういいから。爺さんの遺産なら全部やる。お前は金が欲しいだけなんだろ」

 

 ますます、意味がわからない。

「遺産って、何のことですか?」

 本当に、思い当たることがない。


「まだシラを切るつもりか」

 真野さんは、冷たい目で私を見下ろした。

「爺さんの遺産目的で、娘だと騙して近づいたんだろ」

「……え?」

「孫の俺にも近づいたのは、俺の分まで踏んだくろうと思ったからか」

「真野さんーー」

「爺さんは」

 私に口を挟む隙を与えずに、真野さんは語気を強めて続けた。


「爺さんはお前のこと、最期まで娘だって信じてたよ。俺も、そうだと思ってた。だから、不倫をネタに爺さんをゆすったお前に、少し嫌がらせするだけのつもりだったんだ。まさか、赤の他人だったなんてな」

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