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やっと終わった。
深い安堵に、真野さんの体温も相まって、意識を吸い取られそうになる。
それを、舌を噛んで踏みとどまった。
ここで寝たら、真野さんが消えてしまいそうな気がして。
真野さんは、さっきよりも少しだけ長く余韻を取った後、むくりと起き上がった。
私と目が合って、露骨に嫌そうな顔をする。
「寝てろよ」
ベッドから降りて、自分のパンツを拾っている。
「嫌です」
私もベッドの上に身を起こして、自分が脱ぎ散らかした服を集める。
「嫌ですって何だよ」
「真野さんと、ちゃんと話したい」
「俺はもう話すことなんかない」
真野さんはもうシャツを羽織っていて、手早くボタンを留めていっている。
「嫌がらせするだけのつもりだったって、何ですか?」
最中の発言を持ち出すと、真野さんは小さく舌打ちをした。
「聞こえてたのかよ」
「解放してしてやるって、どういう意味ですか?最後にするって」
「うるさい」
「私、真野さんに何をしてしまったんですか?傷つけたのなら、ちゃんと謝らせてーー」
「もういいから。爺さんの遺産なら全部やる。お前は金が欲しいだけなんだろ」
ますます、意味がわからない。
「遺産って、何のことですか?」
本当に、思い当たることがない。
「まだシラを切るつもりか」
真野さんは、冷たい目で私を見下ろした。
「爺さんの遺産目的で、娘だと騙して近づいたんだろ」
「……え?」
「孫の俺にも近づいたのは、俺の分まで踏んだくろうと思ったからか」
「真野さんーー」
「爺さんは」
私に口を挟む隙を与えずに、真野さんは語気を強めて続けた。
「爺さんはお前のこと、最期まで娘だって信じてたよ。俺も、そうだと思ってた。だから、不倫をネタに爺さんをゆすったお前に、少し嫌がらせするだけのつもりだったんだ。まさか、赤の他人だったなんてな」




