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愛してるって言わないで  作者: Mariko
分からない
18/89

6

「白々しいんだよ」

「……え?」

 真野さんは、さっきまでの様子とは一転して、冷めた目をしていた。

「言っとくけど、全部知ってるからな」

 何の話か分からない。

 目で続きを促すと、真野さんは私の顎を掴み上げてきた。

「俺たちに関わったのがお前の運の尽きだ。そう簡単には解放しない」

 続く真野さんの言葉は、さらに不可解だった。


 その意味を考えあぐねて、押し黙った私は、真野さんの目を見ているうちに、あることに気づいてしまった。

 真野さんが舌打ちをして、私の顎から手を離す。

 その拍子に、私の目から涙がこぼれて、頬を伝った。


「怖いのか」

 真野さんが問う。

「……違います」

 手で涙をぬぐいながら否定する。

 真野さんのことが怖くて泣いているわけではない。

「真野さん、好きでもない人と、初めてシたんだなって」

「はあ?」

 私が無理に誘ったのだ。


「お前、この期に及んで、まだしらばっくれる気か」

「しらばっくれてるんじゃなくて、私、真野さんが何の話をしてるのか本当に分からない……」

「あんまり俺を怒らせるなよ。本当に取り返しがつかなくなるぞ」

「もう取り返しつかないじゃないですか。真野さん、初めてだったのに」


 真野さんは、しばらく私のことを睨みつけていたけど、やがて大きなため息をついた。

「爺さんが騙されるわけだ」

 テーブルに頬杖をついている。

「何がお前をそうさせたんだよ。よっぽど酷い目に遭ったのか」

 その目には、少しだけ同情の色が灯っている。

 だけど、やっぱり何を言っているのか分からない。

 言葉は聞き取れるのに。


「谷川のせいか」

 真野さんが思い出したように言う。

「それとも、もっと前から歪んでて、谷川のことも利用したのか」

 それを聞いて、助けてくれた時のことを言っているのだと分かった。


「ごめんなさい」

「お前……!」

 謝ると、真野さんに掴みかかられそうになった。

「違くて」

 谷川先生を利用したりなどしてない。

「私、真野さんを怒らせてしまった理由が、本当に分からなくて」

 そう続けると、真野さんは白けたように手を下ろした。


「まだ言うか」

「ごめんなさい。真野さんを傷つけるようなことをしたなら謝ります。でも、私はずっと、真野さんのことが好きだっただけで、それ以上のことは何も……」

 何も、心当たりがない。

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