表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛してるって言わないで  作者: Mariko
分からない
17/89

5

「おい」

 真野さんが呼ぶ声がして、ハッと我に返った。

 シャワーを終えたようだ。


「タオルあるか」

 洗面所からそう尋ねてくる。

 しまった。タオルを置いてくるのを忘れていた。

「すみません。横の引き出しに入ってると思います」

「引き出し?」

 探す気配がしている。

 申し訳なくなって、立ち上がった。


「あの、私、そっちに行ってタオル出すので……」

 てんてんてんの中に、真野さんはいったん浴室に戻っていてほしいという意味を込めた。

「ああ」

 返事があったから、汲み取ってくれたのだと思った。

 なのに、洗面所に行ったら、素っ裸の真野さんが立っていた。


「何だよ。散々見ただろ」

 私が慌てて目を逸らしたのを見て、真野さんが言う。

「そうですけど……」

 さっきの自分はどうかしてたのだ。


「お前もシャワー浴びるだろ。脱げよ」

 私の着ているTシャツをめくりあげられる。

 抵抗が遅れて、お腹が露出される。

「見ないでください……」

 おへその横のホクロを手で隠した。

 本郷に、エロいホクロだと言われて以来、コンプレックスだ。


「さっきまであんなに積極的だったのに」

 私のTシャツから手を離して、真野さんが呟く。

「……あ」

 目を伏せていた私は、真野さんのモノが首をもたげたのに気づいた。

「見んなよ。あっち行ってろ」

「でも、タオル……」

「いいから」

 突き飛ばされるようにして、洗面所を追い出された。

 真野さんが、私の目の前で勢いよく洗面所の引き戸を閉める。


「真野さん、あの」

「うるさい」

「あの、手伝いーー」

「黙れ。どっか行け」

 どっか行けと言われても、ここは私の家で。

 でも、反論したらますます怒られそうで、リビングに退散した。



 しばらくして、シャツのボタンを一番上まで留めた真野さんが、大股で戻ってきた。

 こちらに半分背を向ける形で、斜め向かいに座る。

 帰らないんだなと思った。

 私を拒絶するくせに。

 

「真野さんーー」

「言っとくが」

 強引に連れ込んだことを謝ろうとしたら、被せるようにして遮られた。

「ただの生理現象だ。橋本さんに興奮したわけではない」


「ああ」

 それを聞いて、何だか安心してしまった。

「ああって何だよ」

 真野さんがこちらに顔を向けて、怒ったように問いただしてくる。

「あ、えっと、私のこと、好きなわけじゃなかったんだなって」

「はあ?」

「いいんです」

 真野さんが何か言いかけたのを遮った。


「真野さん、私の気持ちに応えようとしてくれたんですよね。私があまりにも好き好きオーラを出してたから……」

 変だと思ったのだ。

 真野さんが私のことをずっと好きだった、なんて。

 好きな相手に、あんな塩対応するわけがない。


 分かっていたはずなのに、喋っていて自分で泣きそうになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ