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「おい」
真野さんが呼ぶ声がして、ハッと我に返った。
シャワーを終えたようだ。
「タオルあるか」
洗面所からそう尋ねてくる。
しまった。タオルを置いてくるのを忘れていた。
「すみません。横の引き出しに入ってると思います」
「引き出し?」
探す気配がしている。
申し訳なくなって、立ち上がった。
「あの、私、そっちに行ってタオル出すので……」
てんてんてんの中に、真野さんはいったん浴室に戻っていてほしいという意味を込めた。
「ああ」
返事があったから、汲み取ってくれたのだと思った。
なのに、洗面所に行ったら、素っ裸の真野さんが立っていた。
「何だよ。散々見ただろ」
私が慌てて目を逸らしたのを見て、真野さんが言う。
「そうですけど……」
さっきの自分はどうかしてたのだ。
「お前もシャワー浴びるだろ。脱げよ」
私の着ているTシャツをめくりあげられる。
抵抗が遅れて、お腹が露出される。
「見ないでください……」
おへその横のホクロを手で隠した。
本郷に、エロいホクロだと言われて以来、コンプレックスだ。
「さっきまであんなに積極的だったのに」
私のTシャツから手を離して、真野さんが呟く。
「……あ」
目を伏せていた私は、真野さんのモノが首をもたげたのに気づいた。
「見んなよ。あっち行ってろ」
「でも、タオル……」
「いいから」
突き飛ばされるようにして、洗面所を追い出された。
真野さんが、私の目の前で勢いよく洗面所の引き戸を閉める。
「真野さん、あの」
「うるさい」
「あの、手伝いーー」
「黙れ。どっか行け」
どっか行けと言われても、ここは私の家で。
でも、反論したらますます怒られそうで、リビングに退散した。
しばらくして、シャツのボタンを一番上まで留めた真野さんが、大股で戻ってきた。
こちらに半分背を向ける形で、斜め向かいに座る。
帰らないんだなと思った。
私を拒絶するくせに。
「真野さんーー」
「言っとくが」
強引に連れ込んだことを謝ろうとしたら、被せるようにして遮られた。
「ただの生理現象だ。橋本さんに興奮したわけではない」
「ああ」
それを聞いて、何だか安心してしまった。
「ああって何だよ」
真野さんがこちらに顔を向けて、怒ったように問いただしてくる。
「あ、えっと、私のこと、好きなわけじゃなかったんだなって」
「はあ?」
「いいんです」
真野さんが何か言いかけたのを遮った。
「真野さん、私の気持ちに応えようとしてくれたんですよね。私があまりにも好き好きオーラを出してたから……」
変だと思ったのだ。
真野さんが私のことをずっと好きだった、なんて。
好きな相手に、あんな塩対応するわけがない。
分かっていたはずなのに、喋っていて自分で泣きそうになった。




